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【オリジナル】国立光明学院11時限目 〜御剣家の新たなる旅立ち編〜 【異能】

156 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2019/07/02(Tue) 05:59
「……バル・ベルデ独立政権打倒のために反政府軍と合流した米軍部隊ですが、
 先月の反政府軍主力部隊と同じく、突如発生した溶岩に飲まれる形で全滅したとのことです。
 なお、今回も付近で火山活動は確認されておらず、専門家は……」

地に足をつけて正面から見る分には大国、そして敵国のホワイトハウスと比べても遜色ない大統領邸は、
しかし当の邸宅から一望できるのはワシントンの街並みとは程遠いスラム街と熱帯雨林である。
そんなちぐはぐな屋敷に今日は一際奇妙なもの――内側から爆発したとしか思えない者や、
抱えた銃ごとガラスと化している者などがそこら中に転がっている。
"杠葉やえ"は屋敷の奥の一室、豪華なのは間違いないその部屋で、一人の少年と対峙していた。
「Hijo de la monta?(山の御子)。火山の国の溶岩遣いらしいなァ。
 ほんまの名前はちゃんとあるんやろけど、昔のこと調べても出てけェへんかったさかい堪忍な」
「何の用だ」
やえの異能――自他のコンディションを自在に操作する能力に戦意を奪われた少年は、
日向ぼっこでもするように足を投げ出して床に座り、やえを睨みつける。
「アンタを救いにきた言うたら、納得してくれるか?」
やえは腕を組んで少年の顔を覗き込むが、その表情は変わらない。
「せやろな。アンタ意外と頭ええみたいやし」
一瞬微笑んだ後、やえもすぐに無表情に戻って近くの豪華としか言いようがない椅子に腰かける。
「せやなァ。アンタ、自分の力をなんや思てる?」
「わからん。神の力と言われ、俺もそう信じてきた」
だが、と少年は目を見開く。
「そうではなかったようだな。俺の神が、お前たちの神より弱いはずがない」
目を見開いたまま静かに声を荒げる少年にやえは半目で応え、溜め息をついて目を合わせる。
「まァ、神の力や思てんやったらそれでええけど、それやったら余計使い方おかしないか?」
「大統領は俺たちの大地を守るために力を貸せと言った。
 あのクズを信じていたわけではないが、この力に他の使い道などない」
「使わんかったらええだけの話やん」
「神に与えられた力を無駄にするわけにはいかない」
はいはい、とやえは小さく鼻で溜め息をつきながら立ち上がる。
「要は使い道探したったらええねんな。せやったらウチらが探したるわ。
 正味な話、アンタみたいな使い方されたらウチらの神サマも困んねん」
「お前の神だと」
「決まりやな」
もうわかったとばかりにやえは少年の言葉を遮って、彼を振り返りもせずに部屋を出た。

「ゆっくりでええよ。もう邪魔するヤツおらんやろし」
「大統領は」
「死亡しました」
奇妙なものが転がる邸宅を、やえは首を回しながら堂々と歩き、
少年、そしてやえの部下である二人の異能者がそれに続く。
「……ヤエ、大統領が」
「待ってくださいっ!」
再び少年の言葉を遮る、今度は前方からの声にやえはリラックスしたまま足を止め、
部下の異能者たちは瞬時に、一人はやえの前に躍り出て身構える。
しかしそれに遅れて現れたのは、身構えた異能者たちと対峙するには似つかわしくない、
相変わらず豪華な、それでいてその豪華さにも似合わない素朴な顔の少女だった。
「誰や」
「大統領の娘ですね」
部下の異能者たちは構えを崩さなかったが少女が何をか言おうとした瞬間、
少年が床を拳で打ちつけたかと思うと少女の真上の天井から、
というより天井ごと赤く輝く溶岩が降り注ぎ、一瞬で少女の影が、
次の瞬間には少女どころか、彼女が立っていた周囲が穴になって消えていた。
「なんや、イジメられとったんか」
「逆だ。だから俺が殺した」
少年は無表情のまま先陣を切って歩き出し、
「アンタ、やっぱり頭ええなァ」
やえも苦笑しながら後に続く。


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