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サスティナが嫌われている理由

10 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2016/09/11(Sun) 17:40
面白くなってきたかな(

冥路
第四章「出逢い」

それからはすぐだった。
俺は、この先の開けた場所が活気で溢れているのを肌で感じられた。丁度そこに駅があり、線路もそこで途切れている。
ここが、冥界の中心部だ。

「おおぉ…」
俺は思わず感嘆した。光で溢れる野原、美しい花々。互いに遊んでいるかのように、そこかしこに飛び交う霊達。
「死後の世界も…捨てたモンじゃねぇな」
正直余り期待してはいなかったが、良い意味でそれを裏切ってくれた。

「…さて、しかし、ここを仕切ってるような奴は居ないのか?さては、ソイツも霊魂か?」
俺は辺りを探す。遠くに、大きな建造物が見える。
「あそこに行けば、何か分かるか…?」
取り敢えず、俺はそこを目指す事にした。
近付いていくにつれ、段々と建物がはっきり見えてきた。城のような感じだ。中に人はいるのだろうか。簡単に入れるものなのだろうか。
俺が気になっていた、その時だった。
…彼女を見たのは。

明るい花畑といった感じの一角に、少女がいた。思えば、あの時目覚めてから初めて、人間らしい人間を見た(まぁ、彼女も人間ではないのかもしれないが…)。薄い桃色の長い髪に、紫色の髪飾りを付けている。首から胸元辺りまで露わになった、ノースリーブの衣装。青紫色のグラデーションが実に美しい。それに加えて、桃色の綺麗な羽衣が優雅に風に靡いている。
一言で言うならまさに「姫」。
俺は彼女から、何か心に突き刺さるような強い気配を感じた。
(こいつは…ただ者じゃ無さそうだ…
しっかし……なんて美しさだ)
恐る恐る近づく。彼女に訊けば、何か分かるかもしれない。俺はどうして、この様になってしまったのか…
…と、彼女が振り返る。ふわっ…と、風が吹いてきた。優しく、暖かみのある風。それでいて、どこか冷たい風…
彼女は、困惑した様子で此方を見る。
「あの、少し訊きたい事があるんd…」
「おい」
突然の別方向からの声に、俺の呼び掛けは遮られた。俺は慌てて声のした方向を見る。
男がいた。上半身は何も着ず、半裸。全体的に黒っぽく、胸に刻んだ蒼い紋章が妖しく輝いている。その姿は風格があり、威圧感にも似た強い気迫が感じられた。
(なっ、何者だ!?こいつは!恐らく、絶対的な力を持っていると見受けられる…)
一瞬で、空気が凍り付いたような気がした。その男は再び口を開く。
「…姫、何度も言っている筈だ。私の許しがあるまで、城の外には出るな、とな…何故守れん?そのようでは、我等冥界王族の恥となる事が分からんのか」
「…私だって…自由にしたいです……王や姫だからって…他の者達と同じでは、いけないのですか…!」

(こいつぁ驚いた、恐らくこの二人は冥界の王と姫、確実に此処を取り仕切っている奴等だ。その間にこりゃ…闇があるぞ!)
「え?、ゴホン!」
俺は聞こえるように咳払いしてみせた。二人は我に返る。
「…おっと、私が此処に出向いたのは他でもない、貴様の存在の為だ」
「…教えてくれ。俺は何故、そこいらの霊と違って肉体を持っているんだ?」
「それは、気にする事は無い…何故ならこの私が、今から貴様を楽にさせてやるからだ」
「…はぁ?どういう事だよ?」
「…と思ったが、貴様の態度は気に食わん。私がこの世界の王であり絶対的存在である事はすぐに察せられる筈だ。言葉を慎め。貴様はそうだな、負界送りにしてやろうか?」
「………」
「いずれにせよ、我が力をもって、貴様を成敗するのみ…と、その前に」
男は懐から何か取り出した。そしてそれを口元に運ぶ。ピッ!と鋭い音が響いた。
(笛…?)
その瞬間、目の前の少女はびくっ!と大きく身震いし、表情を引きつらせながら、何も言わずに城の方へ退いていった。
「…さぁ、始めよう………ん?」
「……………」
俺の記憶は、そこから暫くはあやふやだ。

くさい限定公開物語

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