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芥川龍之介に対する卒業研究の提出用板

1 名前:有村 ◆7M88x/CE 投稿日:2013/08/04(Sun) 16:17
題名の通りです。
キリ番取りはやめてください。
むだなことは書かないでください。
あくまでも提出用板です。

荒らし禁止。
成り済まし禁止。
個人情報の書き込み禁止。
AAを貼るの禁止。
私はここで起こった一切のトラブルに責任を持たない。

7 名前:有村 ◆7M88x/CE 投稿日:2013/08/04(Sun) 16:58
1登場人物の役割
@)主な登場人物について

@五位
「五位」とは位の一つで昇殿(平安時代以降、五位以上の者および六位の蔵人(くろうど)が、家格や功績によって宮中の清涼殿にある殿上(てんじょう)の間(ま)に昇ること)を許される者の下位を示す。この人は男でありこの男についてはいろいろな記述があった。以下にその一部を示す。

『風采の甚だ上がらない男であつた。第一背が低い。それから赤鼻で、眼尻が下つてゐる。口髭は勿論薄い。頬が、こけてゐるから、顎が、人並はづれて、細く見える。唇は――一々、数へ立ててゐれば、際限はない。我五位の外貌はそれ程、非凡に、だらしなく、出来上つてゐたのである』

『第一彼には着物らしい着物が一つもない。青(あお)鈍(にび)の水干と、同じ色の指貫(さしぬき)とが一つづつあるのが、今ではそれが上(うわ)白(じろ)んで、藍とも紺とも、つかないやうな色に、なつてゐる。・・・・』

『有(う)位(い)無位(むい)、併せて二十人に近い下役さへ、彼の出入りには、不思議な位、冷淡を極めてゐる。五位が何か云ひつけても、決して彼等同志の雑談をやめた事はない。彼等にとつては、空気の存在が見えないやうに、五位の存在も、眼を遮(さえぎ)らないのであらう。』

『彼は、一切の不正を、不正として感じない程、意気地のない、臆病な人間だつたのである。』

このような記述や本文から「五位」は顔は良くなく、性格も格別いいわけでもない何のとりえもない人間だということが読み取れる。また揶揄を言われても全く動じず無感覚ではあったが彼には「芋粥をあきるほど飲む」という唯一の欲望があった。


A藤原利仁
この男は実在する平安時代の有名な武人である。この男は民部卿時長のこどもである。物語内では五位に芋粥をたくさん食べさせてやると言って、五位を敦賀に案内した。





8 名前:有村 ◆7M88x/CE 投稿日:2013/08/04(Sun) 16:58
B狐
これは藤原利仁の

「其方、今夜の中に、敦賀の利仁が館(やかた)へ参つて、かう申せ。『利仁は、唯今俄(にはか)に客人を具して下らうとする所ぢや。明日、巳時(みのとき)頃、高島の辺まで、男たちを迎ひに遣(つか)はし、それに、鞍置馬二疋、牽かせて参れ。』

という命令を忠実に守った動物であり、利仁が枯野の路で手取りにした阪本の野狐である。物語の最後には、利仁の家来が五位の為に用意した芋粥を藤原利仁の厚意で飲んだ。

『芋粥』に出てくる主な登場人物は以上の3名である。この3名がどのような関連性を持っているかを次の項目で説明する。



9 名前:有村 ◆7M88x/CE 投稿日:2013/08/04(Sun) 16:59
A)主な登場人物の関連性
前述の五位についての説明は一つ不可解な部分があったと思う。それは「名前がない」ということだ。そう、書き忘れたわけではなく五位には名前がないのだ。主人公ともいえる人間になぜ名前がないのだろうか。
ここで残る2人の主な登場人物に注目しよう。


@まずは、藤原利仁である。彼は自身の言った通りに芋粥を五位に食べさせてあげようとした。だが、五位が食べるのを薦める表現にこのようなものがあった。

『「父も、さう申すぢやて。平(ひら)に、遠慮は御無用ぢや。」
 利仁も側から、新な提をすすめて、意地悪く笑ひながらこんな事を云ふ。』

この「意地悪く」という表現はこのようなことを示しているのではないかと考えられる。利仁は五位はあまり芋粥を食べられないことが分かっていた。それは、今まで我慢していた「芋粥をあきるくらい食べる」ということがいとも簡単に成立してしまうからである。利仁はこのような人間の心理を知っていた。だから、五位がもう芋粥はいらないというのをわかっていたのである。このようなことになると知っていたのでおかしくて仕方がなかったのだろう。つまり利仁にとって五位は人間ではなく、道具でしかないのだ。

A次は狐である。皮肉にも人間である.五位は芋粥を満足な気持ちで食べられなかったのに対し、人間でない狐は満足な気持ちで食べた。これは利仁の出した狐に対する褒美ではないかと考えられる。何の苦労もしていない人間が欲望をかなえてもらえるなんて人間界ではふつうは通用しない考えである。





10 名前:有村 ◆7M88x/CE 投稿日:2013/08/04(Sun) 16:59
2芋粥の役割
@)芋粥とは
まず芋粥はどのようなものなのか。当時の人々にとってどのようなものだったのか。このようなことを知らないと研究することはできないだろう。


芋粥とは「さいの目に切ったサツマイモを入れて炊いた粥」のことである。また、昔のものはヤマノイモを薄く切りアマズラ(つる草の一種)の汁で炊いた粥状のものであった。また昔は宮中の大饗(平安時代に宮中または大臣家で正月に行った大がかりな宴会のこと)で用いられたほど高級であったので、五位は一年に一度食べられればいい方だったという。


A)芋粥の価値
この作品の題名は「芋粥」であるということから芋粥が主人公に大きな影響を及ぼしていると考えるのはそう難くない。五位は芋粥に対してどのような価値観を持っていたのだろうか。



11 名前:有村 ◆7M88x/CE 投稿日:2013/08/04(Sun) 17:00
@五位の芋粥に関する記述は以下のようなものがあった。


『五位は五六年前から芋粥(いもがゆ)と云ふ物に、異常な執着を持つてゐる。芋粥とは山の芋を中に切込んで、それを甘葛(あまづら)の汁で煮た、粥の事を云ふのである。当時はこれが、無上の佳味として、上は万乗(ばんじよう)の君の食膳にさへ、上せられた。従つて、吾五位の如き人間の口へは、年に一度、臨時の客の折にしか、はいらない。その時でさへ、飲めるのは僅に喉(のど)を沾(うるほ)すに足る程の少量である。そこで芋粥を飽きる程飲んで見たいと云ふ事が、久しい前から、彼の唯一の欲望になつてゐた。勿論、彼は、それを誰にも話した事がない。いや彼自身さへそれが、彼の一生を貫いてゐる欲望だとは、明白に意識しなかつた事であらう。が事実は彼がその為に、生きてゐると云つても、差支(さしつかへ)ない程であつた。』


このような記述から五位にとって芋粥は高嶺の花のような存在であったことが読み取れる。だからこそ、五位にとって芋粥をたくさん食べるということはとても価値があったのだが、なぜか五位は芋粥を食べられなかったのである。


Aまた、狐にとって芋粥はどのようなものなのだろうか。

狐の芋粥に対する記述は以下のようなものがあった


『「狐も、芋粥が欲しさに、見参したさうな。男ども、しやつにも、物を食はせてつかはせ。」
 利仁の命令は、言下(ごんか)に行はれた。軒からとび下りた狐は、直に広庭で芋粥の馳走に、与(あづか)つたのである。
 五位は、芋粥を飲んでゐる狐・・・』

これは、利仁が狐に芋粥をやる時の発言である。狐は五位と同様に芋粥を欲しがっていたが、五位とは違い嬉しそうに食べた。

Bどのような違いがあるのか。それは「労働をした」という点である。狐は芋粥を食べる前に前述のような役目を果たしたのに対し、五位は独り言を利仁にたまたま聞いてもらったおかげで、芋粥を食べることになった。このことに五位は罪悪感を感じていたのではないかと推測することができる。



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