掲示板に戻る 前 10 次 10 1 - 10 最新 10

肺塞栓症

[1:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 21:43)]
肺塞栓症、軽いものはエコノミー症候群、血管に血栓が詰まる病気、重いのは肺や脳梗塞を起こす重篤な病気。


[2:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 21:52)]
青森臨産婦誌第24巻第2号,2009年
34 ―― (82)
開胸,血栓摘除術を要した妊娠中発症の肺血栓塞栓症の2例
弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座 横 田 恵・山 本 善 光・田 中 幹 二 尾 崎 浩 士・水 沼 英 樹
青森県総合周産期母子医療センター 佐 藤 秀 平

症   例
は じ め に  肺血栓塞栓症(pulomonary thromboembolism; PTE)は,深部静脈血栓症(deep venous thrombosis; DVT)に引き続いて発症することが多く,妊産婦死亡の原因の一つ となっている。統計的には,羊水塞栓症と肺 血栓塞栓症を合わせて産科的塞栓症とひとく くりにされており,その妊産婦死亡率が産科 出血に次いで第2位と死亡率が高い1)。当科 において,外科的血栓摘除術によって母児と もに救命できた2例のPTE症例を経験した ので,若干の文献的考察を加えて報告する。


[3:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 21:58)]
症例1  35歳,身長159.0cm,体重61.2kg(BMI24.2) 妊娠分娩歴:1経妊0経産 既往歴:高校生の頃より骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndromes; MDS)のため 血液内科で経過観察していた。34歳時(今
回の妊娠の約1年前)に左膝靭帯損傷修復(陳 旧性)および右膝半月板手術を施行した。 家族歴:特記事項なし。 妊娠経過:  平成18年3月,妊娠6週時に切迫流産の ため近医に入院した。翌日より左膝裏の疼痛 と左下腿浮腫が出現し,同年4月,妊娠12 週1日に左下肢全体の腫脹を認めるように なったため青森県総合周産期母子医療セン ターへ紹介,入院となった。 2日後の妊娠 12週3日にはDVTの疑いで当院心臓血管外 科へ紹介となった。  入院時のデータを表1に示した。超音波検 査では総大腿静脈〜膝下静脈にかけて血栓が あることが判明したが,機械的圧迫にても血 栓の変形はなく器質化した血栓であると思われたことから,下大静脈フィルターは留置せず,1日10000〜15000単位のへパリンナト リウムの皮下注射による抗凝固療法が開始 された。しかし,血小板数は3.0×104/μl台


[4:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 22:04)]
第24巻第2号,2009年
35 ―― (83)

で低下し,へパリン起因性血小板減少症 (heparin-induced thrombocytopenia; HIT)
が疑われた。血栓は器質化している可能性が 高く,さらに下肢症状も改善しており,肺塞 栓発症のリスクは低いと考えられたためヘパ リンナトリウムの投与は中止となり,ダナパ ロイドナトリウムの自己注射を開始する方針 となった。  その後は特に症状もなく通院治療を行って いたが,妊娠22週3日に患者自身が下肢の 浮腫と体重増加を気にしてマッサージ店で下 肢マッサージを受けたところ,翌日午前9時 に突然の呼吸苦が出現し,前医へ救急搬送さ れた。CT検査などを行った結果,肺塞栓の 診断(図1)となり,当院心臓血管外科へ再 度救急搬送となった(表2)。胸部レントゲ
ン検査および心エコー検査では右房の著明 な拡大が認められた。動脈血ガス分析上は PaO2 44.8mmHg, PCO2 29.3 mmHgと酸素 化が不十分な状態であったが,酸素投与のみ で呼吸・循環状態が比較的安定したため,まずは再発予防のための下大静脈フィルターが 挿入された。しかし,著明な右心負荷が続い たため肺塞栓の治療適応と判断され,外科的 治療がより確実であろうという血管外科の判 断で,妊娠22週5日,全身麻酔下に肺動脈 塞栓摘除術が施行された(図2)。術後の経 過は良好で,術後9病日目には前医の総合周 産期母子医療センターへ転院となった。  その後,下肢の症状(特に右鼡径部痛)の 悪化があり,今後増大する妊娠子宮による機 械的圧迫によって血栓の増悪が予測され,さらに肺塞栓の残存もあったこと,妊娠継続に より呼吸・循環系にさらに負荷がかかること などを考慮して,妊娠28週2日に全身麻酔 下に選択的帝王切開術を施行し,1210gの 生児を得た。


[5:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 22:09)]
症例2  28歳,身長160cm,体重51.0kg(BMI19.9) 妊娠分娩歴:0経妊0経産 既往歴:24歳 十二指腸潰瘍 家族歴:特記事項なし 妊娠経過:  平成21年2月,自然妊娠成立後,妊娠5〜 6週に切迫流産として近医で入院治療を行った。その後外来で定期的妊婦健診を受診して いたが,妊娠27週頃より下肢浮腫,動悸, 呼吸困難感を自覚していた。同年7月,妊 娠28週4日に前記症状が増悪したため,前 医循環器内科を受診となった。精査の結果, 肺塞栓症が疑われ,当院心臓血管外科へ救急
搬送のうえ入院管理となった。入院時の血液 データを表3に示した。  CT検査では広範囲にわたって肺塞栓が認 められ,右は主肺動脈〜上中下葉各肺動脈 枝中枢側,左はA1+2や下葉肺動脈幹の近位 levelから以下の下葉・舌区各肺動脈枝に血 栓が認められた。肺梗塞はなかった(図3) 。 酸素投与のみで呼吸・循環状態が安定していたため,へパリンナトリウムの持続静注による抗凝固療法が開始された。しかし,翌日 (妊娠28週5日)午前9時頃より,突然の呼 吸困難の増悪,200bpmの頻脈が認められ ショック状態となったため,母体救命を優先 して同日全身麻酔下に緊急帝王切開術を施行 し,1198gの生児を得た。引き続き肺動脈 血栓摘除術が施行され(図4),経過良好で 術後12病日目に退院となった。術後はワー ファリンの投与を継続中である。


[6:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 22:15)]
考     察  PTEは,わが国では比較的まれな疾患と 思われていたが,生活習慣病の欧米化などに 伴い急激に増加している。エコノミークラス 症候群といった言葉や,震災後の突然死など でメディアに頻繁に取り上げられるようにも なり,広く知られる疾患となった。日本における産婦人科領域でのPTEは過去10年の 間に6.5倍に増加したとの報告もある2)。  PTEはDVTに引き続いて発症することが 多く,妊産婦死亡の原因の一つとなっている。 産科におけるDVTの約4〜5%がPTEにつながるといわれ,一方,PTEの90%以上 は下肢DVT に起因するとされている。妊娠 中は,以下の理由などにより生理的にDVT を生じやすい環境にあると言える。
@  血液凝固能亢進,線溶能低下,血小板活 性化,Protein S活性低下 A 女性ホルモンの静脈平滑筋弛緩作用 B 増大した妊娠子宮による腸骨静脈・下大 静脈の器械的な圧迫 C (帝王切開時)手術操作による総腸骨静 脈領域の血管(特に内皮)障害および術後の臥床による血液 滞
 症例1では,妊娠の約1年前に両膝の手術 を受けている。整形外科領域における手術 においてもDVT発症のリスクが高いことが 知られており,その際にDVTを形成した可 能性がある。また,MDSでは血小板数の異 常のみならず,何らかの形態異常・質的異常 により凝固異常が生じることも示唆されてお り,MDS合併によってDVTになった可能性もある。いずれにせよ,DVTに禁忌とされているマッサージを受け,結果的にPTE の発症に至ったと考えられる。  症例2では,明らかな血栓性素因は認められなかった。Protein Sが軽度低下していた ものの,妊娠中としては生理的低下の範疇に あり,非妊時に再度検査をして確認する必要 があろう。  上述のように妊娠中はDVTを生じやすい と言われており,妊婦に対してはより積極的 にDVT発症の予防が勧められる。2004年に 「肺血栓塞栓症/深部静脈塞栓症(静脈血栓 塞栓症)予防ガイドライン」3)が公表された。 リスク分類は表4のごとくとされ,下記に記載した方法で予防していくことが望ましいと されている。


[7:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 22:23)]
1.静脈血栓塞栓症の家族歴・既往歴,抗リ ン脂質抗体陽性,肥満・高齢妊娠等の帝 王切開術後,長期安静臥床(重症妊娠悪 阻,卵巣過剰刺激症候群,切迫流早産, 重症妊娠中毒症,前置胎盤,多胎妊娠な どによる),常位胎盤早期剥離の既往, 著明な下肢静脈瘤などは,高リスク妊婦
と考えられる。 2.合併症その他で長期にわたり安静臥床する妊婦に対しては,ベッド上での下肢の 運動を積極的に勧めるが,絶対安静で極 力運動を制限せざるを得ない場合は弾性 ストッキング着用あるいは間欠的空気圧 迫法を行う。 3.長期安静臥床後に帝王切開を行う場合に は,術前に静脈血栓塞栓症のスクリーニ ングを考慮する。 4.静脈血栓塞栓症の既往および血栓性素因 を有する妊婦に対しては,妊娠初期から の予防的薬物療法が望ましい。未分画ヘパリン5,000単位皮下注射を1日2回行 う。ワルファリンは催奇形性のため,妊 娠中は原則として投与しない方がよい。 分娩に際しては,陣痛が発来したら一旦 未分画ヘパリンを中止し,分娩後止血を 確認後できるだけ早期に未分画ヘパリン を再開し,引き続きワルファリンに切り 換える。


[8:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 22:28)]
このように,ガイドライン上は上記のよう な予防策が講じられてはいるが,妊娠中に関してまだ十分な検討がなされておらず,その 診断法および管理法についても一定のコンセ ンサスが得られていないのが現状である。  統計学的には羊水塞栓症と肺血栓塞栓症を 合わせて産科的塞栓症とひとくくりにされて おり平成19年の厚生労働省による統計4)で は死亡数ゼロとなっている(表5)。しかし ながら,PTE は発症すれば極めて重篤で, 無治療では18〜30%が死亡するといわれて おり,従来より米国・英国・スウェーデンなど欧米各国で妊産婦死亡率の第一位を占めて いる5,6)。このようにPTEはひとたび発症し てしまえば予後不良であり,早期発見・早期 治療が求められる。  急性期のPTEの治療には,抗凝固療法, 血栓溶解療法,カテーテルインターベンショ ン,外科的血栓摘除術がある。PTEは,心 原性ショックを伴う広範性のものから,無症 状で呼吸・循環系にほとんど影響を及ぼさない小さなものまで幅広い病態を示すため,治 療は患者の状態によって選択される。呼吸・ 循環が保たれ血圧や右心機能が正常である場 合には抗凝固療法のみで治療可能である場合 が多い。一方,血圧は正常でも右心機能不全 がある場合には,抗凝固療法のみでは予後が 悪い場合が少なくなく,血栓溶解療法も考慮 する。ショックを呈する重症例では,カテーテルインターベンション(カテーテル的血栓 溶解療法,カテーテル的血栓破砕・除去術な ど)や外科的血栓摘除術を選択して,より積 極的に肺動脈の血流再開を図る必要がある10)。


[9:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 22:34)]
今回の症例に関して言えば,症例1においては右心負荷が継続していたことから,積極 的な治療を要する状態にあった。妊娠継続を 強く望んでおりterminationができなかった こと,HITが疑われたため抗凝固療法を行 いにくかったこと,妊娠のため血栓溶解療法 が困難であったこと,被爆の点からカテーテ ル治療も困難であったことより,外科的治療 が選択された。症例2においては,ショック 状態を呈したことより血栓摘除が望まれ,児 の体外生活可能な妊娠28週であることを考慮して,まずはterminationのための緊急帝 王切開を行った後に外科的治療が行われた。 状況が許せば,カテーテル治療も可能であった可能性はある。

結     語  肺動脈血栓摘除術施行により,母児ともに 救命できた症例を2例経験した。今回は母児 ともに救命できたものの,PTEは発症して しまえば予後不良であることから,発症予 防が最も重要である。予防にもかかわらず PTEを発症してしまった際には,早期発見・早期治療が求められ,循環器内科・心臓血管 外科・放射線科など専門スタッフのいる高次 医療機関へ搬送するべきである。
(なお,本稿の一部は第277回青森県臨床産 婦人科医会にておいて発表した。)


[10:名無しさん@お腹いっぱい。 (2019/11/30(Sat) 22:43)]
文     献 1)
小林隆夫. 深部静脈血栓症と肺塞栓症(静脈血 栓症). 周産期の出血と血栓症. 小林隆夫, 水上尚 典, 白幡聡編. pp.276-304, 金原出版, 東京. 2004. 2)Kobayashi T, Nakabayashi M, Ishikawa M, Adachi T, Kobashi G, Maeda M, Ikenoue T. Pulmonary thromboembolism in Obstetrics and Gynecology incresead by 6.5-fold over the past decade in Japan. Circ J 2008; 72: 753-756. 3)肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓 症)予防ガイドライン作成委員会.肺血栓塞栓 症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガ イドライン第2版. 2004.
4)平成19年人口動態調査「妊産婦死亡の死因別に みた年次別死亡数及び率(出産10万対). 厚生労 働省ホームページ(ttp://www.mhlw.go.jp/) 5)小林隆夫. V.肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症 の予防対策. 4.産婦人科領域. 静脈血栓症ガイ ドブック. 小林隆夫編. pp.117-132, 中外医学社, 東京. 2006. 6)小林隆夫. 産婦人科領域における静脈血栓症予 防の実践. 日産婦新生児血会誌2007; 16: 14-22. 7)財団法人母子衛生研究会. 母子保健の主なる統 計. 2008. 8)小林隆夫. 肺血栓塞栓症. 武谷雄二総編集. 新女 性医学体系プライマリーケア部門. 第8巻 産婦 人科救急. pp.249-262, 中山書店, 東京. 1999. 9)小林隆夫. 深部静脈血栓症―産婦人科領域における頻度.カレントテラピー2002; 20: 347-350. 10)安藤太三, 應儀成二, 小川 聡, 他. 肺血栓塞栓 症および深部静脈血栓症の診断・治療・予防に 関するガイドライン. Circulation Journal 2004;


掲示板に戻る 前 10 次 10 1 - 10 最新 10

NAME:
MAIL:

read.cgi ver.4.21.10c (2006/07/10)