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【零】地図から消えた村…【質雑】

1 名前:天倉澪&繭 ◆DCL4aAEA 投稿日:2020/05/29(Fri) 21:37
まゆ「私、聞いたことがある…。
   昔、この辺りに、お祭りの日に消えた村があって…
   森で迷った人は、その村に誘われる…って…。
みお「ダメだよ、お姉ちゃん。
   それはただの設定なんだから。怖がらせちゃダメ!
まゆ「だって…ここは怖いの好きな人が多いって聞いたよ。
みお「え? そうなの?
まゆ「うん、私…わかるの…。

みお「ふ〜ん…。あと、他の人(零シリーズ)も募集中だよ。遠慮なく参加してね。
まゆ「他の人って…いるのかな…。

みお「私たちは『紅い蝶』の設定が基本で
   『眞紅の蝶』限定の話題は、答えられないかもしれないからね。
   ごめんね。そうそう、新作『濡鴉ノ巫女』の話題も大丈夫。
まゆ「澪、ダメだよ! メタ発言は!
みお「そんなこと言ったって、他にどう表現するの?
まゆ「…。
みお「まだあった。『紅い蝶』の設定は
   儀式をせずに、なぜか村から出られちゃった…という感じだよ。
まゆ「また…。

みお「後、基本は二人で返答するけど『澪宛』『繭宛』と書いてあれば
   一人で返答するね。もう一人の方に秘密は厳守するから心配ないよ。
まゆ「澪…お姉ちゃんに秘密はよくないよ…。
みお「プライバシーの保護だよ。お姉ちゃんも知ってるでしょ?
まゆ「うん…わかった…。

816 名前:318の続き(その1) 投稿日:2020/11/16(Mon) 22:38
仁も義も救いもない世界から姉を守る為に、名の知れた若き女ギャングに成り上がって血風を吹かせ続け、
元は弱小だった組織を一大組織にまで大きくさせるという功績を挙げた澪。待遇は勿論金に困ることもなくなり、
余程後先を考えない金遣いでもしない限りは、生涯飢えて死ぬことはまず無いほどに私財を築くことが出来た。
…だが、澪にとっての心の安らぎとはそんなものにはなく、姉の平穏・幸福であることを常に忘れてはいなかった。
そして、後ろ盾のない無力な一般人の頃と違って力と選択肢を得た今は、この腐敗した街を姉と共に去るチャンスだった。
長年暮らしてきたが、嫌な思い出は有れど良い思い出はないので、最早未練などはない。
後は、如何にして組織を捨てて足抜けするかであった。実質澪の御蔭で巨大な組織になったが、それをあっさり忘れた組織の連中は
次第に増長し、幅を利かせ、かつて壊滅させた敵対組織『A』と何ら変わらない暴虐非道ぶりを見せていった。
元々は姉を守る為、姉を救うべく被った罪を逃れる為に庇護を受けた組織だったが、こんな好き放題をさせる為に尽くした訳ではない。
虫の良すぎる欺瞞と分かってはいたが、寧ろ手を切る良い機会でもあると踏ん切りがつき、組織を抜ける決意をする澪。
本格的に裏切る前に、まずは事前に買い取っていた安全な新たな住処へと繭を連れて行った。
勿論、誰からも怪しまれ、目を一切付けられていないことを確認した上で。
「これからはここで新しい人生を共に歩もうね、お姉ちゃん。でもその前に…私はこれから、最後のケリを付けに行く。
 ………大丈夫。必ず……ここへ戻ってくるから。だから……待っててね、お姉ちゃん。」
心配する繭を安心させるべく悲壮な覚悟を優しい笑顔で隠し通した澪は、再びあの腐った街へと戻っていく。これまでの過去を清算し、新たな人生を歩むために……。



――――――――――それが繭の見た、澪の最後の姿となった――――――――――


817 名前:318の続き(その2) 投稿日:2020/11/16(Mon) 22:40
「今までの恩を忘れたのか!? 幾らお前さんでも許さねえぞ、『ツーフェイス』!!」
「私はこんな組織にするためにずっと尽くしてきた訳ではない。今のアンタ達…かつて、アンタ達ですら忌み嫌ってた『A』の奴らと何ら大差ないよ!
 アンタ達をそこまで醜くさせたのは、私にも責任がある。虫の良い身勝手な言い分なのは百も承知…。だからこそ……ケリを付けさせてもらうから!」
「ふざけんなぁ!! もうテメエは仲間じゃねえ! 裏切り者だぁーーーーー!!」

かつて仲間だった者達との血で血を洗う殺し合いを、死に物狂いで生き抜こうとする澪。
どれだけ傷を負っても彼女を支える原動力は、「姉とまた会いたい。生きていきたい。」という想いのみ。
ただ己の私腹を肥し続けたいという者達の醜い我欲の念より、澪の切なる執念が勝ったのは、かれこれ数時間経った後だった。
喜ぶ暇なく戦後処理として、裏社会で学んだ理屈・力学を駆使して足が付かないよう、自分の出来得る最大限の証拠隠滅工作を施した。
後は誰にも追われないよう行方を眩まし、姉と再会してずっと平穏に暮らすのみ。

………自分は死後、地獄逝きなのは既に覚悟を決めている。組織の命令とはいえ、数えるのも飽きるほどには屍を築いてきた上、裏切る為に元仲間達も殺した。
今更血濡れの手を綺麗に出来ないことは分かり切っている。
――――――――それでも、そんな自分でも出来るのならば……現世にいる内は、姉と共に平穏に暮らしていきたい。姉と幸福に生きていきたい。
たった一つ、自分に許されることがあるならば――――――――――

夜明けの空は雲一つない晴天だった。それは、姉との暮らしとギャングとしての生き方の狭間で悩んでいた頃とは一転、
黒い靄がすべて晴れた今の自分の心境のようにも見えた。
ただ、あまり長く余韻に浸ってもいられない。やがて、パトカーのサイレンが聞こえて来るだろう。
その場から離れ、空港へと続く道を往く澪。上がったばかりの日差しは、今日ばかりは光輝いて見えた。

―――――――――さあ、もうすぐだ。もうすぐ、新たな人生を―――――――――







……………………一発の銃声と共に、衝撃が澪の身体を貫いた……………………


818 名前:318の続き(その3) 投稿日:2020/11/16(Mon) 22:41
「え……………?」

一瞬、何が起きたか分からなかった。次第に、腹の辺りが熱くなる。
手をやると、血が付いた。ああ………そうか。私は……撃たれたんだ。
振り返ると、煙を上げる銃口が見えた。ただ、追っ手にしては銃口の位置が低すぎる。
見えたのは大人ではなく、一人の少女だった。明らかに自分よりも年下の少女が、涙で潤んだ眼で睨んでいた。
初めて見た顔だったが、明らかに憎しみに歪んでいた。だが、歪んではいるが、顔立ちは何処かで見た覚えがあるような………

「おまえは………おまえは………あたしのお父さんを殺した!
 ゆるせない………ゆるせない………ぜったいに…………!!」

少女は、澪がお父さんを殺したと叫んだ。そして彼女の服の胸元の名前の○○○を見た時、澪は思い出した。

……以前、いつ頃だったかの敵対勢力との抗争に勝ち、息も絶え絶えな男に自分が止めを刺そうとした時に、
「何か言い残すことはある?」と珍しく最後の情けを掛けたことがあった。
その男は、目も合わせずに呟いた。

「〇〇〇………すまねえ…………もう……会えねえ………」

後腐れなく引導を渡してやり、これまで殺してきた者達の一人に加えただけに過ぎなかった名も知らぬ男だったが、
最期の言葉がずっと印象に残っていた。○○○とは、妻だったのだろうか。それとも、行きつけの店で知り合っただけの、行きずりの女だったのだろうか…。
それを知る機会もないと思い、やがては記憶の片隅にしまわれていたのだが、名前を見てようやく理解した。



―――――――――――そうか。この子は、あの男の――――――――――――


819 名前:318の続き(その4) 投稿日:2020/11/16(Mon) 22:42
全てに合点が行った澪は、無表情のまま少女に近づいた。口からは一筋の血が流れる。
そんな澪に少女は、怖くなって後ずさった。撃たれたのに何とも感じていないような様子に見えた。

―――何で、ちかづくの!? いたくないの!? こわくないの!?
何で、みっともないいのちごいをしないの!? そうしたら、もっとうってやろうと思ってたのに!!」

澪の尋常ではない様子に、少女は次第に憎しみよりも恐怖が勝ってきた。『この女は、人間じゃないのか!?』
憎き父親の仇を前にしながらも、澪と違い修羅場の経験などない少女は恐怖に竦み、忽ち拳銃を奪われた。

―――そんな……じゅうをうばわれた!! ころされる……いやだ……しにたくない………!!!
お父さん………お父さんのかたきをうてなくて………ごめんなさい……………!!!

観念した少女は、悔恨の想いに囚われたまま固く目を閉じる。
次の瞬間、銃声が響いた。 激しい痛みが少女を―――――――――貫かなかった。
「え………?」
恐る恐る目を開けると、目の前の女が、女自身に向けて銃を撃った姿が見えた。
即死ではなかったが、傷口が心臓に近いことから、助かるとは思えないのは幼い目でも分かった。
自分を殺さずに何故こんなことをするのか、恐怖と困惑の眼で少女は澪を見る。そんな少女に、澪は微笑んだ。

「あなたは………何も…悪く……ない……。こ…れは……私が……やった………こと…………。
 さあ…………早く……行きなさい………。
 いいね……………あなたは………人殺し……なん…て………しな……かった………」

澪の言葉でようやく我に返ったか、突き動かされるかのように少女は脱兎の如く駆けていた。
去り行く少女の後ろ姿を最後まで見届けた後、澪は仰向けに倒れた。

―――――それで良い。 あなたには私に復讐する資格がある。
でも、このままではあなたは人殺し。だから、こうすることで私が自殺しただけになる。
後はどう生きるかはあなた次第だけれど……私が言えた筋合いでは、ないかもしれないけれど……
……どうか、私と違って………真っ当に……生きて…………。

心の中で少女への願い事を済ませた澪は、妙に爽やかな気持ちで晴天を見上げる。
不思議と死への恐怖はない。寧ろ、これが当然なのだとすら思えた。

―――――やはり、どんな理由だろうと……ギャングに身を染め切った私が今更平穏無事に暮らすなど……虫の良過ぎる高望みだった。
これは紛れもなく、因果が巡り巡った罰だ…。ならば潔く、罰と共に地獄に落ちよう………。
…………お姉ちゃん………約束を守れなくて………ごめんね……………。
それだけが心残り………だけど……どうか…………私の後を追うなんてことは……しないでね…………。
どんなに辛くても……そんなことをした所で………お姉ちゃんと違って、私は地獄に逝くのだから……………
難しいかもしれないし………残酷なことを言うのかもしれないけれど…………
どうか…………こん……な…私の……こと………は………わす…れ…て………しあ……わ…せ…………に………………


………………………さようなら…………お姉ちゃん………………………



姉への最期の想いを空に向けて遺した澪。
その直後、一陣のそよ風が吹き通る。



風が吹き抜けた後……………そこには、澪の亡骸が残るのみであった………。

820 名前:318の続き(その5) すみません、これで最後です 投稿日:2020/11/16(Mon) 22:45
――――――――――――某所の某一室。
豪華さや派手さはないが、人並みの暮らしをするには十分な居住空間。
『食べるには困らないくらい蓄えはあるけど、派手な暮らしぶりだと怪しまれるからこんな感じの部屋を選んだよ、お姉ちゃん。
 それと口座は一纏めにせず分散させて、かつ名義も別々にすることで足が付かないようにもするから大丈夫。それから………』
細かいところまでは覚えていないけれど、色々と便宜を図ってくれた末にここに連れてきてくれた澪の心遣いに、改めて感謝する繭。
………ただ、どれだけ住み心地が良くても、肝心の澪がいないのでは………。
部屋の中でただ一人、澪の帰りを今か今かと待つ繭。
……その時、窓の方からそよ風が吹き込んできた。

「澪……………?」

風に揺られて波打つカーテン越しに、澪の輪郭が見えた気がした。
そして……何かが聴こえたような気がした。

「澪!!」

脚の後遺症など気にも留めず即座に窓に向かい、カーテンをどけてベランダに出る繭。
だが………澪は、いなかった。

「澪………?」

気のせいだったのだろうか……。それとも、幻覚だったのだろうか……。
ベランダで呆然としていると、一頭の蝶が舞っているのが見えた。

「蝶………こんな時間に………?」
 
 …………………澪…………………………」

蝶はしばらく舞った後、西の空に向けて飛び去って行った。
まるで別れを惜しむかのように羽ばたいていく蝶を、繭はただ見送るしかなかった――――――。



…………以上、滅茶苦茶長くなって恐縮だが、『ツーフェイスのミオ』の辿る結末を想像して描いてみた。

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