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【第六猟兵】東方妖怪(雉鶏精)の小雉子吉備の待ち合い茶屋【第六猟兵のPC(プレイヤーキャラ)ってこの板的には半オリか?】

50 名前:もう1つの失敗作 投稿日:2020/10/04(Sun) 19:29
誰かが失敗作、と言われたのが最初の記憶。
「くそっ、上手くいかねえな!」
香木が焚かれた室内は独特の匂いと空気で満ちていた。それは禁断の秘術。骨で作った人形に命を吹き込む反魂の術。
自分と似たような人形が術者から罵声を浴びせられている。
目覚めたばかりの、ぼやけた視界と思考の中でそれを他人事のように見ていた。
しばらくして、自分も同じ運命を辿ることなど露ほども知らずに。


打ち捨てられ倒れていたところに弱りきった妖怪が倒れていた。まずはその妖怪を飲み込んだ。
僅かだが力と心を手に入れたのだと思った。その妖怪になりきろうと姿を変えて、その妖怪らしく振舞って。
そうして歩く内にまた弱りきった妖怪が居た。この姿の持ち主の名前だろうか、絞り出すような声で呼ばれた。
こちらへ手を伸ばしてきたので―――取り込んだ。


どうやら二匹とも誰かに会いにこの幽世へと渡ってきたらしい。
先程呑み込んだ妖怪が親しくしていた相手のようだ。
そして最初の妖怪はこの妖怪に誘われてやってきたらしい。
術者が与えた知識は限られたものだが、骸の海を越えるのは容易ではないことくらい分かる。
心のある存在はそこまでするのか。理解できない。


理解するためには二匹目の妖怪が会おうとした存在を飲み込めば分かるのかも知れない。
そう思うと自然と姿を二匹目の妖怪に変え、気配を頼りに歩を進める。


ふと目をやった路傍の水溜りに映ったのは白磁の肌に尖った耳、金髪のショートボブを揺らしながら
こちらへ虚ろな翠色の双眸を向ける女の姿


「妬ましい」


何か手に入らないもの、自分にないものを埋めようとする気持ちが強くなる。
これが嫉妬という感情だろうか。無意識に口にした言葉が情報と感情を結びつけてしっくりと来た。
ならばやるべきことは一つだろう。


「小雉子吉備、貴女の全てが妬ましい」


情報の中にある彼女を求めて歩みを進める。
取り込んだ対象の持っていた情報でしか無かったものが、自分の感情として湧き起こる。
こんなに妬ましいのだから、余程価値ある存在なのだろう。
彼女を取り込んだ時、きっと自分が満たされるはず。

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