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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ壱

74 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2016/04/26(Tue) 23:06
>>69(柚葉さん)
>人が他の動物や植物を食するのと同じく、吸血鬼の方にとっては生きる為に必須であることを
>耐え忍ぶというのは、並大抵の苦労ではないと思います。
>くれぐれも無理をなさらないよう、ご自愛ください。
ありがとうございます
思いましたとおり、柚葉さんはお優しいのですね
せっかく貴女が献血係としての心づもりで来ていただきましたのに申し訳なく思います
けれど、よろしいのですよ
これはわたくしが望んでいること、人々と交わりたいと願うわたくしの当然の代償でございますから

…そうですね、ヴァルトさんにも気を使っていただきましたし、もう少しこのことについてお話しさせていただきましょうか

申しました通りわたくしは故郷の居城に居りました頃は、人間のメイドの方がわたくしに血を分け与えてくださいました
むろん、一人の人が担当するには荷が重い役目ですから複数のメイドさんが交替でその任に当たっていました
まだわたくしが年端も行かない幼少でありました頃…
わたくしは高位貴族の令嬢として礼儀作法を躾けられていましたゆえ、血を頂くのもご挨拶を怠ることはございませんでした
メイドさんが首筋を見せてくださると、
「ブオナッペティート!(いただきます)」
と言って静かに牙を立て、一定量いただきましたら、
「エスタート モルトブオーノ!(ごちそうさま)」
と申しました
メイドさんも皆、笑みを絶やさず
「きちんといただいて、えらかったですね。お嬢様」
と言ってくださるので、幼心に
(みんながわたしに喜んで血を分けてくれる。みんながわたしを愛してくれている。)
漠然とですが、そんな風に考えておりました

ある時、新しい人間のメイドさんが雇われまして、わたくしの新たな献血係に加わりました
その方は少し緊張した面持ちで、わたくしに挨拶され、それからしゃがんで首筋を見せました
その身がわずかに震えていたので少し不思議に思ったのですが、お腹ペコペコの幼女のわたくしの気持ちは直ぐに香しい血流へ向かいます
そしてその方の血はとても美味しかった!
今までにない味わいにわたしははしたなくも夢中で吸血してしまいました
そのうち、そのメイドさんが
「あの、お、お嬢様、そろそろ終わりにしていただけませんか…?」
と戸惑うような声で言ってきたのですが、わたくしときたら
(もうちょっと、もうちょっとだけ!だってこんなに美味しいんだもん、いいよね?怒られたりしないよね?)
そう思ってなお吸い続けておりましたら、不意に
「イヤアアアアアアアーーーーーッ!!」
絶叫
そして、突然の衝撃を受けて体が宙に浮いたかと思うと、背中に激しい痛みを感じました
暫くの間を置いて、メイドさんに突き飛ばされて、壁に激突したのだと悟りました
それから、わたしは火が付いたようにワアワアと泣き叫びました
背中の痛さのせいではございません
怒りでもございません
あれは − 恐怖
「わたしは拒絶された」
幼子ゆえ、はっきりと言葉にしてそう思ったわけではありませんが、まさにその心境だったのでしょう
愛されている、慈しまれている、そう感じていたところに突如向けられた、全面的な拒絶の意思
それは今までにない強烈な衝撃となってわたしを襲い、わたしは深い恐怖の闇に囚われました…
その方はその後、献血係から外れ、やがてお城を去りました
去り際にわたくしに『ごめんなさい』と優しい文字で書かれた便箋を残して

あの時の恐怖はやがて悲しみとなってその後も長くわたくしの心を苛みました
本当に幼子の感傷というものは、恥ずかしいほどに胸の残ることもあるものですね

ですから、わたくしが『禁血』をして人の中に入ろうとするのは、感傷ゆえの我儘でございます
けれど、それでもあの時のあのメイドさんを怯えさせてしまった自分の過ちを忘れないためにも、この今の在り方を変える気はございません
何より、わたしは人間の方々が好きなのですから

ああ、いけません、こんな長い語りになりましょうとは恥ずかしい限りですね

>ここで私が、お嬢様やレイナさんと巡り合ったのも、偶然ではなく紡がれた運命の糸が結ぶ、縁なのかもしれませんね。
左様でございますね
あの幼い日の過ちを思えば、こうして血を『絆』としてくださる貴女に会えましたこと、わたくしは感謝いたします


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