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【オリジナル】異国小路の吸血姫　新館ノ弐

639 名前：吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日：2017/10/16(Mon) 17:55

>>633

…はて、何と説明したら宜しいのでしょうか
わたくしは逆に貴方様が仰る『人間の血の味は鉄の味』というのが、どうにも実感が湧かないのです
人の血の味の濃厚で豊潤で、心の渇きを絶対の豊饒の至福へと染め上げるあの味は、例えようがございません
わたくしは、貴族の子女として城館では他にも美味しいお料理をいただいておりましたし、今も我が家のメイドさんより和洋中、いずれにおいても心豊かに満たしてくれるお料理を日々食させてもらっておりますわ
ですが、それらのいずれの料理、食材の中にも、人血と似た味は見つけられません
もちろん、漫画などで代用食のように扱われているトマトジュースも全く違った味でございます

わたくしの城館のメイドに、元は人間でありながらわたくしの魔の気を注いでしまったために、眷属になった者がおります
彼女は城館にてメイドとして働くことになりましたが、初めて彼女が血を　−　我が家と契約している献血係の人間提供の　−　飲んだ時の目を瞠った顔が今も忘れられません
『なにこれ…、なにこれ…？
すごく美味しいよ、人の血ってこんなに美味しかったの？』
と言って、夢中で飲んで、それから　−　すごく落ち込んで、
『わたし…、本当に吸血鬼になっちゃったんだね…』
と言った時の泣き笑いの表情…
わたくし胸が締め付けられる思いでしたわ
わたくしは、なんて惨い運命を彼女に強いてしまったんだろう…と

ああ、申し訳ございません、話が脱線してしまいましたわね
そういうわけですから、わたくしたちが感じる血の味を人間の方に説明するのはとても難しいのです
貴方様がどうしてもそれをお知りになりたいのであれば、誰か吸血鬼に牙を立ててもらって眷属になるしかないのではないでしょうか？

分かり合えない部分が互いにあることは悲しいです
ですがだからこそ、それでも自分の感覚や常識だけに囚われることなく、相手を理解しようという心構えは忘れたくないものでございます


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