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【オリジナル】国立光明学院 5時限目【異能】

692 名前:神代 ユーリ ◆bsWHC3P. 投稿日:2017/04/05(Wed) 22:14

>>620 用務員

うん、正面から臨むのはいつも通りだけど、
"クロ"とは違う意味で猫みたいだから困ってる。
ライオンや虎、豹や熊ならいくらでも狩ってきたさ。
でも、彼女はそのどれとも違う。
小さくて弱そうだから、毒気を抜かれるし、
その癖、内側には爪を隠し持ってるのが分かるから、
気が抜けない。
あと、行動が読めない気まぐれな態度、
口では面倒臭がってるのに一生懸命なところ、
…何というかこう、調子が狂う。

いや、僕も知らないな。
道化と会ったのは避難所が初めてだし、
少なくても、向こうの次元に、
道化仮面の男なんていなかったよ。
だから多分、キミの想像通り、
単純にヒカワに近づくのが気に入らないんだろうね。
…尤も、彼女にとっては道化の方が近しい、
気の許せる存在であることくらい見てれば僕にも分かるさ。
だからもしかして、
僕が彼を鬱陶しいと感じる本当の理由も、
粘着されてるからじゃないのかもしれないね。

同感だね、"全てを救う"なんて、
そんなのは神様にだって無理。
技量がどうのじゃない。
そもそも、何処かで何れかを捨てないと、
単純に理屈として破綻するからさ。
ミツルギだって、理想について本気で考えてた身だからね。
それが机上の空論だなんてこと、とっくに勘付いてた筈だよ。
だから多分、彼女が目指してたのは、
不可能な理想を追い求めた自分のまま、綺麗に死ぬことだったんじゃないかな。
………あれ?意地悪だな。キミは相談に乗ってあげないの?
師っていうのは、人生を学ぶ上での父親だよ。
怖い夢を見て震える娘くらい、抱きとめる器量が必要なんじゃない?

RRは回り出すと、意外と厄介なんだよ。
知らない間にどんどんアド差が広がっていくからね。
だから、動き出す前にこっちが展開する。
ミツルギが尻尾を振りながら追いかけてきたら、
彼女の苦手な油虫を投げつけて怯ませる。
反逆の翼をどや顔で翻して来たらフレシアに食わせる。
手段を断たれて、涙目になりながら肩を震わせる彼女…
うん、ミツルギはやっぱり、こうでなくちゃ嘘だと思うんだよ。

…そんな立派なものじゃないさ。
願うだけじゃ画餅、実際守れなきゃ何の意味もない。
全部守りたいなんて考えてた僕は、
向こうでは、恥ずかしい程無力だったから。
だからこっちでは、より大事なものを選んで守る。
キミの後悔も多分…
突き詰めれば、ここに帰結するんじゃないかな?

代替が利いても、キミはキミ。
立場なんて飾りだよ。
ヒメラギやミツルギ、風音を守ってくれたのはキミなの。
後から来る新しい用務員じゃないでしょ。

いや?黒翼を倒して世を救ったんだから、
事実、英雄であることに変わりはないさ。
ただ、彼はそんなものに見合うような、
煌びやかで晴れ晴れとした、大人物なんてガラじゃないってこと。
どちらかというと、闇に潜む血塗れた殺人鬼って表現の方が合ってたよ。
でも、彼女が自殺した原因が完璧超人さんにあるってことだけは判断できたんだ?
何か確証があったんでしょ?数考えられる原因の中、よくその男を疑う気になったね。

それはキミだけじゃない。
人間は変わらない方が楽な生き物だからね。
変わろうとすれば、必ず自己否定の声に苛まれる。
僕もそうだったよ。
"全てを守りたい"って願う、以前の自分と戦って咬み殺してやった。
…完膚なきまでにね。どんな敵に情けを掛けようと、
自分にだけは掛けたら駄目だよ?一気に持ってかれるから。

………。
…うん、自制がうまく行ってないみたいだね。
文字通り、味を覚えてしまった猛獣のようだよ。
僕が戻ったからには、多少の楔を打たせて貰いたいけど。
生憎、守るメリットのない約束は彼女曰く、
何故かすぐに"忘れちゃう"らしい…。
やれやれ、困ったお姫様だね…どうしたものか…。

…それが通るなら、僕の仕事だってそうだよ。
仕事の結果として出す成果が、
世間一般で言う個人のものとして異常でも、
今や光明には、前提として求められてるものだから。

…そうだね。
ここまで話が進んでる以上、本人の否定は無意味。
それなら、そもそも前提から覆してみたらどう?
加盟条件自体を、不成立状態にすればいいんだよ。
既に覚えてしまった嫉妬の感情は撤回できなくても、
もう1つの、"そういう相手がいないこと"って条件の方は浮動でしょ?
だからつまり…まぁ…恋人を作ればいいんじゃないかな…。


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