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【零】地図から消えた村…【質雑】

819 名前:318の続き(その4) 投稿日:2020/11/16(Mon) 22:42
全てに合点が行った澪は、無表情のまま少女に近づいた。口からは一筋の血が流れる。
そんな澪に少女は、怖くなって後ずさった。撃たれたのに何とも感じていないような様子に見えた。

―――何で、ちかづくの!? いたくないの!? こわくないの!?
何で、みっともないいのちごいをしないの!? そうしたら、もっとうってやろうと思ってたのに!!」

澪の尋常ではない様子に、少女は次第に憎しみよりも恐怖が勝ってきた。『この女は、人間じゃないのか!?』
憎き父親の仇を前にしながらも、澪と違い修羅場の経験などない少女は恐怖に竦み、忽ち拳銃を奪われた。

―――そんな……じゅうをうばわれた!! ころされる……いやだ……しにたくない………!!!
お父さん………お父さんのかたきをうてなくて………ごめんなさい……………!!!

観念した少女は、悔恨の想いに囚われたまま固く目を閉じる。
次の瞬間、銃声が響いた。 激しい痛みが少女を―――――――――貫かなかった。
「え………?」
恐る恐る目を開けると、目の前の女が、女自身に向けて銃を撃った姿が見えた。
即死ではなかったが、傷口が心臓に近いことから、助かるとは思えないのは幼い目でも分かった。
自分を殺さずに何故こんなことをするのか、恐怖と困惑の眼で少女は澪を見る。そんな少女に、澪は微笑んだ。

「あなたは………何も…悪く……ない……。こ…れは……私が……やった………こと…………。
 さあ…………早く……行きなさい………。
 いいね……………あなたは………人殺し……なん…て………しな……かった………」

澪の言葉でようやく我に返ったか、突き動かされるかのように少女は脱兎の如く駆けていた。
去り行く少女の後ろ姿を最後まで見届けた後、澪は仰向けに倒れた。

―――――それで良い。 あなたには私に復讐する資格がある。
でも、このままではあなたは人殺し。だから、こうすることで私が自殺しただけになる。
後はどう生きるかはあなた次第だけれど……私が言えた筋合いでは、ないかもしれないけれど……
……どうか、私と違って………真っ当に……生きて…………。

心の中で少女への願い事を済ませた澪は、妙に爽やかな気持ちで晴天を見上げる。
不思議と死への恐怖はない。寧ろ、これが当然なのだとすら思えた。

―――――やはり、どんな理由だろうと……ギャングに身を染め切った私が今更平穏無事に暮らすなど……虫の良過ぎる高望みだった。
これは紛れもなく、因果が巡り巡った罰だ…。ならば潔く、罰と共に地獄に落ちよう………。
…………お姉ちゃん………約束を守れなくて………ごめんね……………。
それだけが心残り………だけど……どうか…………私の後を追うなんてことは……しないでね…………。
どんなに辛くても……そんなことをした所で………お姉ちゃんと違って、私は地獄に逝くのだから……………
難しいかもしれないし………残酷なことを言うのかもしれないけれど…………
どうか…………こん……な…私の……こと………は………わす…れ…て………しあ……わ…せ…………に………………


………………………さようなら…………お姉ちゃん………………………



姉への最期の想いを空に向けて遺した澪。
その直後、一陣のそよ風が吹き通る。



風が吹き抜けた後……………そこには、澪の亡骸が残るのみであった………。

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