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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ六

271 名前:羽藤柚葉 ◆cfGE57zE 投稿日:2024/01/28(Sun) 11:17
>>270

そういった逸話に関しましては、このお屋敷を見守ってきた付喪神の頭領であられる
扇谷先生にお話を伺いましょう。

扇谷先生:

「この屋敷の下に埋蔵金?
そんなものは根も葉もない噂…というわけでは決してない。
噂話には、きちんとした根拠があるのだよ。

かつてのこの屋敷の主は、小藩ながらも大名家に仕えて代々勘定方の纏め役を勤め
お家の財政を支える立場にあった。
同時に清廉潔白、質素倹約を心掛け近隣の民から大いに慕われていた。

そのような人柄を評価され、財政を切り詰め捻出した金銀を
飢饉や天災等の一大事において役立てるようにとその一部を預かる立場にあった。

無論代々の主はその一文たりとも私物化する事は無かった。
徳川時代の数々の天変地異、飢饉や幕末における世情の混乱に至るまで
大いに役立てたのだ。
その事細かな運用の記録は当時を知るための貴重な史料として残されており
この町の文化財課で保存され研究の対象となっている。

かつての主の経歴と経緯からよく有る埋蔵金の噂話が生まれたのであろうが、
かつて厳重に保存されていた金銀は武家の終わりとなる廃藩置県の折に
禄を失うであろう藩士達のために使われ、何も残っておらぬ。

もしかつての主が藩から預かった金銀を私物化して貯め込むような輩であれば、
この屋敷は土地神様や屋敷神様から加護を受けられるような場所にはならぬ。
欲に目の眩むような醜く澱んだ気は穢れとなり汚れた金銀と共に貯め込まれ、
決して新たに住まう者に良きものを齎すまい。
代々の主は常に語っていた。

「金銀は川を流れ行く水の如く地と人を潤すものでなくてはならぬ。
一箇所に貯め込んだ水はいずれは澱み腐り意味を為さなくなる。
その流れる道筋を造る事こそ我等の勤めぞ。」

そして主の清流の如き志は、かの龍神姉妹殿の加護の象徴とも言えるこの屋敷の敷地内における
鍾乳洞と湧き水の呼び水となったと言えよう。
既にこの屋敷には、埋蔵金などというものより遥かに尊く価値あるものが
目に見える形で現れているのだ。

そして今の屋敷の主殿も、そして侍従殿も代々の主に決して劣らぬ清流の如き心を
見事に受け継いでおる。」

お褒めに預かり、光栄です。扇谷先生…。

まあ、埋蔵金というものにロマンを感じるというお気持ちも分からないわけではありません。
仮にそれらについて探求されるのであれば、目に見える金銀以上に価値のあるものに
きっと気付かれる事でしょう。
このお屋敷の代々のお役目に関する記録に関しましてはきちんと訳され文献資料として
町の図書館にもございます。
興味がおありでしたら、是非足を運んで下さいませ。

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