【オリジナル】異国小路の吸血姫　新館ノ六

717 名前：水橋パルスィ@メイド服 ◆Parseejo 投稿日：2024/05/01(Wed) 22:17

>>463, >>487
何たること、新年に際して惰眠を貪ろうなどとは千年を経ても倭国の風習へ馴染めませんわね。
―――されど主はお客様を夢の世界へと誘う心算のようでございます、願ったりかなったりで妬ましい。
羽藤侍従、用意された茶と菓子はお客様方へ行き渡りましたわ、姫様が読み聞かせをする場は整っております。
この麗らかな春の日、姫様の玉を転がすような声は天上の声楽にも似たる響きでお客様の耳に届くでしょう。

そう、欣喜雀躍すべき日なれば我が祖国では微睡んでいる暇等ございません、客人をもてなし、自らも出先でもてなされる妬ましい期間
我が主もまた前夜祭と言うべき「チャハールシャンベ・スーリー」を挙行されました、アフラ＝マズダーの嘉するところとなりましょう。
神とて例外ではございません、我が仔ナルセフが吐火羅国＜トハーリスターン＞の砂塵に無念と骸を遺して世を去った後、祖国から倭国へ流れ着き新たに信仰を得た者も居りました。
その者らが我が主を含め、この館に住まう者、訪れる方々を客人としてもてなしたいと申しております。

（アフラ＝マズダーの息子、アータル）
ttps://i.ibb.co/BNYJZhF/image.jpg
（アナーヒター〔アナーヒト〕、サラスヴァティそして弁才天）
ttps://i.imgur.com/3M8DXle.jpeg

「今日は新年、我が麗しき母＜アフラ＝マズダー＞が創造する真に善なる世界がまた近付いたということだ。
人の子達よ、どうか共に祝って欲しい」
「幸いにして好天が続いている、これもアフラ＝マズダーがこの日を祝うよう思召したのだろう。
あるいは、悪として生まれながら善行を積む奇特な吸血姫への報労を運命として定められたか」

「息災にしておられたか姫君、中級善神＜ヤザタ＞が第二位・アナーヒト、再び御前へ推参仕った。
出雲でも見かけた気がするが……まさかな」
「そのまさかかもしれないぞアナーヒター、アーチェロ姫は土地神から神の代行を命ぜられることがある。
何かの都合で呼ばれたかもしれない―――ただ、今は詮索する場ではなく、客人をもてなすことが第一だろう」

ささやかではございますが、縁起物＜ハフト・スィーン＞を飾り、馳走を用意致しました。
アラブの狂信者どもは祖国の民達に圧政をもって信仰を曲げさせましたが、年中行事まで取り去るには至りませんでしたの。
我が祖国の香草、ヨーグルト、チーズをふんだんに用いた肉や魚料理をご堪能下さいませ。
残念ながらチリソースの用意はございませんが、悪しからず。

>>450, >>466
橋を塒とする妖怪ですもの、水に好きも嫌いもございません。
まして主君は流水を苦手とする種族でございます、川を渡る折には身を挺して流れを堰き止める程度やってのけねばなりませぬ。
そして雨風は臭いや物音、気配を消すのにうってつけ、妖魔たる者はこれを喜ぶべきです。
お客様も嵐の夜はお気をつけあそばせ、血肉に飢えた橋姫が知らぬ間に後ろへ立っているかも。

姫様はまこと繊細な感性をお持ちでいらっしゃる、風情を愛でるには必要な素養であり妬ましい限りですわ。
その紡ぐ言葉を一つ一つ噛みしめます内に体験したことも空想のものもまるで記憶を呼び起こすが如く感じられます。
羽藤侍従、傘持ちは新入りにお任せください、姫様のお相手をなさるのがより時間当たりの満足度を向上させられましょう。
報酬はお二方の背後にてやきもちを焼かせていただければ嫉妬の妖怪には過分に過ぎる程にて。

セレーノ侍従が仰ること一々ごもっとも、四季を司る者として看過できませんわ姫様
私は二百万年雨を降らし続けたことがあれば、地表から水の一滴さえも残さず奪い去ったこともございます。
今の気候もまたここ数十年のものに過ぎませぬ、であればこそ今の眺めを記憶に留められることこそ永く生きる者の勤め。
次の数十年はラフレシアが年中咲き誇るか、トナカイと白熊が地表を跋扈するか、全てはアフラ＝マズダーのみ知ること。

自然とは残酷であり人妖の想いと関係なく移ろうもの。
その中に風雅を求め、侘び寂びあるいは枯淡の美を求めるのはこれまた人妖のみがなし得ることでございます。
ご覧くださいお客様、姫様にセレーノ侍従、羽藤侍従が菓子で求める風雅を演出して下さいました、実に妬ましい創意ですわ。
春に相応しい紅茶ならばダージリンのファーストフラッシュを置いて他にはございません、摘みたての中の摘み立てを航空便で取り寄せました、便利な時代ですこと。

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