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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ弐

239 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2017/02/19(Sun) 10:51
>>230(柚葉さん)

>お嬢様のお母様…奥様は心の赴くままに旅をされている事については御自身が楽しんでおられる事は間違いないと思います。
>でも、私程度ではその御心の深さを推し量る事は不可能でしょうね。(汗)
>だからこそ自由奔放、天馬行空、不羈奔放と言うのでしょうか…。

いえいえいえ、そう仰って下さる柚葉さんは、やはり母の本質を分かってくださっているのではないでしょうか
自由奔放、天馬行空、不羈奔放…、とても的確な評価だと思いますわ
突き抜けた自由人…いえ、自由魔こそ母の気性…、私を外へ外へと足を向けさせるそんな血潮を与えてくれた方だと思うのですよ

>一族と広大な領地、闇の領域を守るために日夜御心を砕いておられる旦那様が
>心惹かれて正室となられた理由が、何となく分かる気がしますね。
>うふふ…今も故国ではきっと旦那様の一番の心の拠り所として日々を共にしておられる事でしょう。

ええ…、父はわたくしから見ましても、ストイックに、当主たるを長き生涯の務めとしてどこまでも勤しんでおります
あのような奔放極まりない母を何故に正室として迎えたのか、昔はわたくしも少し不思議に思えたこともございましたが
むしろ、自分に無い気質、自分とは違う可能性を母に見ていたのかも知れません…

これは、古くより母に仕えていますメイドさんから、こっそり伺った話ですが…
かつて信仰熱き人たちとわたくしたちの眷属が、より激しく、より憎み合い、激しく鮮血と火花を散らしていた時代
それは本来なら美しく生命の息吹に満ちているはずの深き森と田園のその地にてのお話だそうでございます

後にわたくしの父となる若者も、軍勢を率い、その最前線でその暗黒と流血の勇名を轟かせ、人間の軍勢と混戦のただ中に在りました時に
二つの軍勢の間に、信じられない俊敏さで、人間たちの首に片っ端から牙を立てた、閃光の如く羽ばたく翼をもつ魔の影が一つ…

闇を纏った、蠱惑の瞳を持つ女性魔族のその信じられない働きに、父の麾下の軍勢が歓声を上げかけるや −
こんどはその翼の女性は何のためらいもなく、爪を立て、父の軍勢の者たちの面を、片っ端から瞬時にして打擲して廻り…

『あなたたちぃ、悉く迷惑極まりないわねぇ。何をなさっているわけかしらぁ?
 見てみなさいよぉ。
 綺麗だった、森も、田畑も、家々も、焦がされ、壊され、村人は逃げ惑ってぇ。
 馬鹿やるならぁ、他所でしてくれないぃ?』

悠揚迫らぬ声でそう言った女性に、唖然としていた父は、
『…わが同族でありながら、人間の生活を護ろうとするのか?』
と尋ねると、女性は、
『はあ?知らないわよぉ。
あのねぇ、そこの水車小屋で寝起きしている貧乏画家にとってはねぇ。
 他に描いていられる題材なんて無いのよぉ。
 わたくしが将来を楽しみにしている彼のぉ、修業を邪魔しないでねぇ。』

ちょっと怒気を含ませそう言ってから、さらに人間たちの方を見て、
『あんたたちを後ろから監視していた、ヴァチカンのお偉方の腰ぎんちゃくの督戦隊の連中はぁ、わたくしが眠らせておいたからぁ。
 連中が目を覚ましたら、『我等は勇躍奮戦、あなた方をお守りし、不逞の魔族どもを撃滅しました』とでも言っておきなさいよぉ。
 どうせ、教会に脅されてイヤイヤ出征してきたんでしょ?
 早く帰って、家族を安心させてあげたくないのぉ?』
と申しました

結果、その会戦は毒気を抜かれた形でノーサイド…
女性が『あー、疲れたわぁ。』と言って去ろうとするのを、父が
『貴女は何者だ?』
と訊くと、女性は
『たぶん、そのうち分かるんじゃないぃ?めんどくさいけどぉ。』
と言って去っていきました

後日、父の父…わたくしの祖父が父に当てがった縁談の、そのお相手が城館を訪れ、再会はあっけなく実現いたしました

その女性が誰かは…申すまでもございませんわね

わたくしが母との会話でそのことに触れましたら、一枚の油絵を手に取りニィっと笑って、
『あの戦の勝利者はわたくしよねぇ。』
と、とても得意げでしたわ

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