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【オリジナル】国立光明学院11時限目 〜御剣家の新たなる旅立ち編〜 【異能】

105 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2019/06/11(Tue) 01:48
異能員――異能社会を監視し、その平穏を守る者達。
異能を悪用、濫用し異能社会を脅かす異能者を取り締まる者、
異能発現者を保護、その他の社会的措置を行う者に大きく分けられる。

「異能指令。異能発現者を感知。場所はKZ-40地区。
 力は小さいが、暴走の可能性あり。定員1名」
KZ-40地区。
異能員"風嶋静音"は心の中でその言葉を素早く反芻し、勢いそのままに通信機を手に取る。
「風嶋静音。上番前ですが直接行ける距離にいます」
「了解。定員1名確保」
静音は先程と同様、素早く頭を整理する。
出勤に使う車、今はいらない。詰所での暇潰しに使う裁縫セット、いらない。
全部取りに帰って、改めて出勤すればいい。
黒のスーツ、着た。サングラス、今着けた。通信機、今持った。
よし。
静音は静かに気合を入れ、文字通り風のように部屋を出た。

KZ-40地区は静音の住むマンションのすぐ近くの公園を中心とする一帯であり、
まさにその公園に異能発現者はいた。幼稚園児かせいぜい小学校低学年。
うずくまって泣いている姿はこの年の子どもなら珍しくもないが、
少女の周囲にはバラの腐ったような異様な植物が蠢いている。
静音は少女を視界の隅に捉えたまま周囲を確認する。
誰もいない、好都合。でも探し物は、
「うっ……うっ、わっ、ああああああああああ!」
静音の存在を認識したらしい少女の叫び声と共に腐ったバラが、
意外と硬いのかメキメキと音を立てて静音に向かって伸びる。
しかし静音は慣れた様子で左手を突き出し、
自身の異能である風を用いた刃を撃ち出してこれを切り裂く。
少女は驚きと恐怖に歪んだ、それでいて呆然とした表情のまま間髪入れずに、
今度は静音の周囲にバラを生やしたが、静音は自分を中心に竜巻を発生させてこれも一掃する。

まずい。
暴走する異能発現者の前に敵として立ちはだかるのは、
力ずくでの拘束を最終手段とする異能員の規程もあって事態の悪化にしかならない。
幸い落ち着いたのか逆に精神が限界なのか、攻撃の手を止めた少女を尻目に、
静音は再び周囲を確認する。
いた。
静音の視線の先には少し離れた街頭にしがみつき、
震えながら二人の様子を見守る女性の姿があった。
静音は気流を発生させ、文字通り風に乗って女性の目の前に降り立った。
「あの子のお母さんですね」
ただでさえ目の前で繰り広げられる異能バトルに怯えていたところに、
その片割れが文字通り飛んできたとあって、女性はしりもちをついたまま震えていたが、
静音は体を彼女に、顔を少女に向けた状態で続ける。
「手短に説明します。あの子は異能者、いわば超能力者です。私も同じ。
 見ての通り、異能者は危険な存在です。
 あなたが望むならあの子は私たちが預かり、
 あなたは今後異能と関わらずに生きていくこともできます」
静音は少女を視界から外したうえに背を向けてしゃがみ、女性の顔を見据える。
「質問です。あなたはこれからもあの子を育てますか」
女性は唇を震わせるばかりで声を発することはなかったが、
同じく震える両手で静音の肩を掴み、大きく2回うなずいた。

「や、あっ、ああ……」
女性の腕を掴んで引きずるように全身する静音に少女は再びバラを差し向けるが、
静音はこれを吹き飛ばし、あっという間に少女のもとに辿りつく。
少女は観念したのか恐怖で動けないのか、先程の母親と同じポーズでしりもちをつく。
「大丈夫。こわくないよ」
そう言いながら静音は一歩下がり、掴んでいた女性の手を放す。
「お母さんもこわくないって」
解放された女性は最初はふらふらと少女に近づいていたが、
しゃがんだかと思うとすぐに少女を抱きしめ、少女も母親に抱きついた。


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