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【オリジナル】国立光明学院11時限目 〜御剣家の新たなる旅立ち編〜 【異能】

391 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2019/10/25(Fri) 01:38
「"パンチェッタと若鶏のディアボラ風"でございます」
長身痩躯で一見頼りなそうに見えるギャルソンは、
しかし無駄のない動きで料理を並べ、最後には笑顔を忘れずに去っていく。
"神代小鳥"は申し訳程度の笑顔を返すや否や横目で彼を追い、
その姿が見えなくなると飽き飽きしたような、もっと言えば慣れた様子でため息をついた。
「・・・なんて?」
「"パンチェッタと若鶏のディアボラ風"ですわ」
まともに見ているのかもわからない視線を料理に向ける小鳥に、
"雷坂美雪"は音もなくナイフとフォークを手に取りながら答える。
「せめてメニュー名が一般人でもわかる店で食事しない?」
「あら?雷坂グループエンジニアリングチーム管理本部長兼(※長いので以下略)のワタクシに、
 駅前のおでん屋さんで夕食を済ませろと言うんですの?」
「そこまでランク下げろとは言ってないよ・・・」
やはり呆れて、そして慣れた様子で話を切り上げて料理に集中しようとする小鳥だが、
美雪は小さく鼻を鳴らして、そもそも、などと畳みかける。
「いつも言っているように、もっと軽い気持ちと服装で来てくれていいんですのよ。
 ワタクシたちのグループのお店で、しかも貸し切りなんですもの。
 なんなら氷牙くんも連れてきてくださいな。もちろん旦那はお断りですけど」
「私も最低限のマナーっていうか、常識はあるからね・・・。
 他人のことは言えないけど、さすがにこんなところに氷牙は連れてこないよ」
「氷川小鳥の息子なら、ワタクシが手取り足取りマナーを教えてあげますのに」
「・・・おい、息子に手をだすのは本当にやめろ」

「"ティラミス クラシコ"でございます」
聞いた瞬間から小鳥の頭には"ティラミス ナントカ"としか残っていないデザートを崩しながら、
近況報告にも世間話にも区切りをつけた2人は昔話――20年前の話に花を咲かせていた。
「・・・ああ、そうだ、昔話ついでに聞くけど」
小鳥はナントカにスプーンを空振りしながら、珍しく美雪に視線を向ける。
「久しぶりに草薙先生の話」
「……本当に久しぶりですわね」
美雪はまるで演技のように驚いた表情をした後、スプーンを置いて少し姿勢を正した。
「何もありませんわ、この20年間と同じく」
「・・・」
「光明にもどこにも、彼が存在していたという情報も痕跡もなし。
 彼の存在を示すのは、ワタクシ達の記憶だけ」
小鳥という一点を見据えながら美雪は、そして、と続ける。
「その記憶もこの20年間で失われている。
 氷川小鳥、20年前の貴女は3日と置かずに彼の話をしていたのに、
 それが3週間になり3カ月になり、今日彼の話をするのは」
「3年ぶりかぁ・・・」
小鳥がいつの間にか美雪から目を逸らしてナントカに集中する一方、
美雪は手だけを動かしてエスプレッソを取ったものの、視線は小鳥に向け続けている。
「あの時は驚きましたわ。氷川小鳥と草薙先生が」
「もういいよ、その話は」
ナントカから目を離さない小鳥を尻目に美雪は、失礼、と手元のエスプレッソに視線を向けた。


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