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【オリジナル】国立光明学院11時限目 〜御剣家の新たなる旅立ち編〜 【異能】

1 名前:御剣 雪儚 ◆vmdp0Tew 投稿日:2019/05/13(Mon) 23:59

…ようこそ、“光明学院”へ

このガッコは“ぼんぼん”“おじょうさま”いっぱいの金持ち名門校……

しかして…そのしょうたいは…

異能者あつめて…そだてて…たたかわせ…
国の“まもりて”つくっちゃう…政府直属の“ひみつそしき”……
ぜったい…そとにはないしょ……です

でも…もちろん…
異能ない子も…いっぱいいる……ですよ?
異能者もちがう子も…なかよくまなんで…なかよくあそぶ……
そんなたのしいガッコにしていけたらな…っておもってます……

きょうみ…ある……? じゃ…これ……

ttps://www65.atwiki.jp/kkgakuin/

うちのパンフ…そこの“入学案内”のぺーじみて……?

転校・就職するのにひつような校則…かいてあるの……
ここも11スレ目だけど…新入生は“ぜっさんぼしゅうちゅう”……
いっしょに…はっぴーな“すくーるらいふ”…たのしんじゃおーぜ…べいべ…(廿_廿)b


†名簿とその他の施設†

名簿(キャラクター):
ttps://www65.atwiki.jp/kkgakuin/pages/43.html

美術室(イラスト置き場):
ttps://ux.getuploader.com/komyo/
(閲覧パスワードヒント:「光明学院と対を成す異能者学院の名前」)

分校(避難所):
ttp://jbbs.shitaraba.net/internet/24652/

旧校舎(旧避難所)
ttp://jbbs.shitaraba.net/otaku/17702/


639 名前:(1/2) ◆V.9gKSA. 投稿日:2020/01/01(Wed) 00:35

―――――狂風が身を叩く。

咆え唸りながら宙を翔け、私へと牙を剥く姿なき獣。

異能ではなく、技術でもなく、それらに支えられただけの暴力により。

素振りの風圧が暴威となって、彼我の狭間で荒れ狂う。


まったく、巫山戯ている。常識という概念に喧嘩を売っているのか。

斬撃を飛ばす程度なら、確かに私にも容易だ。両親もできる。知人の内何人かも可能だろう。

しかし剣技のけの字もなく、肉体のスペックで可能とする者は流石にいない。

よくぞまぁ其処まで変化われる程、思い込みを強められるものだ……などと。

迫る風を打ち払いつつ、呆れを脳裏に過らせていたら。

一際大きな衝撃波が、土煙を巻き上げながら飛んできた。

これは払い除けられそうにないな、と短く思考。取る手はひとつ、受け流し。


手の鉄棒と風の刃が噛み合い、あまりの威力につい踏ん張ろうとするも。

それでは駄目だ。目先の脅威に足を止めては、次なる彼の一手が届く。

抗うな、止まるな、動き続けろ。極小の身動ぎを積み重ね、手中の圧力を従えて。

一刹那にも満たない攻防を経て、見えざる暴を飼い慣らす。得物で以て空を巻き取りつつ、前後反転。

既に背後で剣を振り被っていた対手へ、勢いをそのままに解き放つ。


瞬間、空気が爆ぜた。

炸裂する衝撃が肌を刺し、骨身を揺るがす。

そして一拍遅れてくる、豪速の幹竹割り。刃でなく鍔に棒を添え、流しながら自身も流れ。

剛剣の威力に押し流されるように、彼の懐へと飛び込んだ。

其処は剣の間合いより更に内、拳足が支配する原初の闘争圏。

素手と素手の殴り合いなら、私が不利だと判断できる。

体重差、体格差、筋肉の質・量の差、その他諸々。概ね全て向こうが上だろう。

相手を利する間合いへ踏み込む、剣士として致命的過失。


そんな道理は斬り捨てる。


ほぼ密着した体の隙間に、鉄棒を通し。喉を捉えながら、他の手足を胴へ絡めて。

体重移動と関節の捻りを上手く使い、勁を練りつつ吸い上げる。


やはりこの人は、あまりにも術理と縁遠い。

嘘も誤魔化しも駆け引きもなく、筋肉が一直線に意を伝えてくる。

だからこそこの距離であれば、読むも操るも他愛ない。


二人分の力を載せて、刺突が喉を穿った。

斬るとも刺すとも、打ち据えるとも異なる手応え。肉を潰すこの感触は、どうにも慣れない。

手から伝う嫌悪感を抑え、絡み付かせた手足を離そうと身動ぐと。

自分で思うより疲れていたのか、離れる前にふらついてしまった。

私が、ではない。今しがた喉笛に石突を叩き込んだ、眼前の男性が。

痛打に意識を手放した彼が、私ごと仰向けに倒れ掛かる。

咄嗟に棒を手放した。空いた片手を後頭部に回し、軽く引き寄せる。

頭からでなく、せめて背中から倒れられるように。



640 名前:(2/2) ◆V.9gKSA. 投稿日:2020/01/01(Wed) 00:35

果たして目論見は成り、二人共に横たわった。

意識は? まだない。気絶した振りならすぐ理解る。

この人は言葉こそ回りくどいが、言外の反応は素直だから。

『体は正直』というあれだろうか。流石は父上、よき言葉だ。


………折角なので、無防備なこの人を観察してみよう。

一枚岩から削り出した彫刻のような、重厚な筋肉の鎧。

触れればゴムの塊にも似た感触が、指を俄かに押し返す。

逞しさ、男らしさとは、このことを言うのかと思いを巡らせ。

右腕から胸板にかけてを無遠慮に突き回し、指先に返る弾力を愉しむ。

そして手は徐々に胸を上り、首筋を通って頬へ。

こちらは首から下と裏腹に、柔らかくしなやかな手応えを感じる。


それにしても若々しい。私と同じか、より一回り上くらいにしか見えない。

何の冗談だ、これでアラフィフなんて。常識という概念に喧嘩を売っているのだろうか。

私の両親とは歳の差がダブルスコアだそうだが、とてもそうとは思えない。

二人の若作りも大概だが、この人はそれ以上だ。


それもこれも宿す異能と、狂気と紙一重と謳う想像力の産物。

持てる才覚を磨き抜くまで、どのような地獄を練り歩いてきたのだろう。

苦渋を耐え忍ぶために、何を拠り所としてきたのだろう。

掌中の頬肉を弄びながら、そのようなことをちらほら考えていると。

何となしに目に留まる、開けた前髪から覗く額。

染みのひとつとしてない其処に、つい視線が引き寄せられてしまう。


徐に、油性ペンを取り出した。

携帯していた場所も理由も、一切を忘却の彼方に押し遣る。

今この瞬間に、肝要となるのはたったひとつ。この額に落書きすることだ。

書いたっていいじゃないか、人間だもの。心中でそう言い訳しつつ、指先の震えを抑えて。

書き込みの邪魔とならぬよう、前髪をもう少し開き、片手で軽く押さえ……準備完了。


それでは、伊座―――――筆先を目的地へ近付ける。意気込みと、自身と共に。

その時、背後から足音が聞こえた。音が聞こえるまで気付かないとは、随分と気を抜いていたようだ。

咄嗟に首だけで振り返れば、視界に入るのはよく知る顔。血を分けた妹たちの片割れ、上の方。

しかし私が声をやる前に、呆然としたまま走り去ってしまった。

『おねえちゃんが、おねえちゃんが』と、譫言の如く呟きながら。


あの様子ではどうも、誤解を招いてしまったかもしれない。

遠からず父上の耳に入るだろう。その時、話がどのように拗れているのか。

私が押し倒されたような話が伝わるのは拙い。早急に誤解を解くべきだろう。

溜息と共に、標的に視線を戻す。目覚めている様子は、未だない。


やれやれだ、まったく。

今はまだ、この人を手放す訳にはいかない。

彼の剣がこの身を貫き、悲願を達すその時までは。


脳裏を掠める血腥い未来を、夢幻へと還すために。


額に『肉』の字を書き残してから、妹を追って駆け出した。



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