掲示板に戻る 全部 前 50 次 50 1 - 50 最新 50 スレ一覧



レス数が 1000 を超えています。残念ながら全部は表示しません。

【オリジナル】国立光明学院11時限目 〜御剣家の新たなる旅立ち編〜 【異能】

67 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2019/06/02(Sun) 19:02
あれから20年。

「会長」
仕事で疲れた体、陽が落ちた学院――あの頃と何も変わらない慣れたシチュエーション。
しかし変わったはずの肩書きで呼ばれたその男は、それについて薄目を開けて訂正する。
「ミツルギ、いつも言ってる。会長じゃない、事務長だ」
国立光明学院事務長"神代ユーリ"。
彼は薄目のまま発言の主を睨みつけたものの、ただでさえうたた寝していたという隙があるうえに、
「ふふっ……でもわたしたちが何度事務長って呼んでも起きなかったんですよ、会長」
と、二人の淑女に笑われ、会長もとい事務長は黙り込んでしまう。
先に事務長を起こしたのは国立光明学院教師"御剣セレナ"。
そしてとどめを刺したのは同学院理事長"神咲紫音"である。
疲れで頭が回らない今勝ち目はないと悟ったのか、ユーリは再び目を閉じ、小さくため息をつく。
しかし彼に強い味方――議論を諦めたユーリにとっては大きなお世話なのだが、
今まで黙って三人の様子を見ていた男がフォローに入る。
「その辺りにしておこう。事務長も疲れと期待と……とにかくいっぱいいっぱいだ。
 特に息子の入学式ともなると、会長時代を思い出しても仕方があるまい」
「用務員」
やはり大きなお世話、面倒な話になると踏んだユーリは目を見開き、強い味方を咎める。
ユーリに用務員と呼ばれたその男は"ヴィルフリート・ヴォルケンシュタイン・和久井"。
"WWW"こと彼は用務員ではなく、国立光明学院校長である。
「ふふっ……会長。用務員さんじゃなくて、校長先生でしょう?」
淑女たちに再び笑いかけられ、ユーリはいよいよ額を押さえて机に肘をつく。

「僕のところはいい。キミの方はどうなんだ」
もはやこの話題は避けられないと悟ったユーリは、先手とばかりにセレナに水を向ける。
「はい。楽しみにしていますよ。・・・主にレイが」
言い終わると彼女は、そしてユーリも同時にため息をつく。
「学院生活は最初が肝心だと言って。自己紹介でのポーズ指南から始まって。
 最終的に入学式には。校長の挨拶中にガラスを割って乱入するのはどうかなんて・・・」
再び彼女は、ユーリにいたっては三度目のため息を重ねる。
「幸い。紅刃も呆れていましたけどね」
「紅刃ちゃんはセレナ似だものね」
ため息のデュエットを尻目に笑顔を絶やさない紫音が、より一層の笑顔で問いかける。
「でも来年。お父さんにべったりの双子ちゃんのときは大変そうね」
「そうね・・・。昨日もレイの提案するパフォーマンスを。手伝うと張り切っていたわ」
「明日来る妻にはいざという時、一家を凍らせるよう言っておいていいかい?」
呆れ顔をしているが、いわゆるいじる側に立てたことで内心ユーリは笑顔である。
しかしもちろん、そんなことは長くは続かない。
「ふふっ……そんな零くんの一番弟子の氷牙くんは大丈夫なのかしら?」
因果応報、ヤブヘビである。
しかしユーリには強い味方――今度は少なくとも大きなお世話ではない存在が現れる。

「紫音、そろそろ」
神咲紫音の秘書兼ボディガード"金城千草"。
かつてドアはぶち破るものとばかりに荒れ、暴れていた彼女だったが、
今は神咲グループCEOに仕えるだけあって静かに、しかし威厳をもってドアを開ける。
「ちーちゃん!」
紫音の方はCEOの、そして会長を追い詰めていた威厳はどこへやら、
椅子のまま千草に突進し、腰あたりに抱きつく。
しかし、
「紫音。40手前で抱きつく方も抱きつかれる方も、あとちーちゃんと呼ぶ方も呼ばれる方もキツいぞ」
言われるが早いか、紫音はちーちゃんがいじめる、と今度はセレナに抱きつく。
ユーリはヤブヘビから逃れられた安堵感、は忘れて目の前の光景にため息をつく。
それを見たWWWに笑いかけられた彼はまた、額を押さえて机に肘をつくのだった。

続かない。


掲示板に戻る 全部 前 50 次 50 1 - 50 最新 50 スレ一覧

read.cgi ver.4.21.10c (2006/07/10)