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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ五
268 名前:
吸血姫アーチェロ ◆
ufrlRV4E
投稿日:2022/08/03(Wed) 22:19
>>258
(柚葉さん)(つづきです。)
強き者の怒号。弱き者の哀訴。
強き者の打擲。弱き者の悲鳴。
こんな酷い光景を見ているしかないだなんて…。
不作でわずかに収穫を見たお米が役人の手によって奪われていく。
僅かな雑穀しか手元に残らず何とか目こぼしをとひれ伏して願う農民に無情の鞭の雨が降り
かかる。
これが「徴税」ですって?ただの略奪ではありませんか。
「これは画家のお嬢様が描いた、過去の世界の再現です…。」
お嬢様はこんな酷薄な場面を描いてはいらっしゃらないはずです!
それに神使様も、辛そうな顔をしていらっしゃるではありませんか。
「姉神様の情念と記憶がお嬢様の筆を通してここまで再現したのでしょう。
甦る記憶のままに克明に。
任せるしかありません、我が主と姉君様に。
それを見届けるためにわたしたちはここにいるのですから。」
(今お二方はこの地の社の巫女さんとして農民のために、役人に無体なことをするな、と申し
立てていますが。)
これは…、かえって火に油の様相では?
(傲岸な表情を浮かべた役人が姉君様の襟首をつかみ、姉君様は − 。)
龍神の本体を顕現されましたね。
これで役人も畏れ入って平伏するのでは?
「…どうやら、そうはいかないみたいですね。」
(周章狼狽した役人が刀を抜いて姉神様に切りかかります。)
お馬鹿さんね、あんなものではかすり傷一つ付けられるわけも無いのに。
(そう思っていたわたくしは次の瞬間愕然としました。)
「やめろー、かみさまになにするんだー!」
(彼女を慕っていたのであろう小さな子どもが姉君様の前に立ち、白刃がその首へ!)
「ぐわっ!」
「間一髪ですね!さすが我が主、役人をひっぱたいて刀の軌道を逸らしました…が。」
逸らし切れず、子どもの腕に切りつけられて!
も、もう、わたくし我慢できません!
(飛び出したわたくしは、子どもを抱きしめてそのまま飛び上がります。)
「よかった…、お二方、この子の傷は浅いです、すぐに治療を…。
あの…、姉君様?
その立ち昇るオーラは、怒り…?」
「許さぬ…、許さぬぞお、貴様らあーーーっ!!」
こ、これは、一天にわかに掻き曇り、稲光が。これは不穏すぎます。
嵐が、嵐が呼ばれています!
姉君様、どうかお静まりを。
って聞こえていないのですかーっ!?
(嵐はたちまち大水を招き、そしてあたり一面濁流と化しました。)
信じられません…。
これが、あの、お優しい姉君様の為していることなのですか?
(数刻の後、嵐は治まりました。)
「アーチェロさんに感謝します。
昔と同じ場面の繰り返しと思って激高してしまったけれど、子どもは切り殺されなくて済んだ
のね。
それでかつてのそのときよりも早くに正気に戻れて誰も死なせずに済んだわ。
あなたたちが村人と、ついでに役人も避難誘導してくれたからだけど。
記憶の中の世界だけれど、やはり人を殺めるのは嫌…。」
お役に立てたのなら幸いです…。
「ごめんなさい。
もう気が付いたかしら?
『真祖』の方が言っていた『もっと面倒な敵』が何かを。
そう、わたし自身よ。
ふだんは大人しいふりをしていても、わたしの本質は荒魂(あらみたま)。
こうして人に簡単に災いを為してしまうのよ。」
でも、お怒りになられたのは農民のため、なかんずくあの子どものためだったではありませんか。
やはりお優しいのがあなた様の本質だとわたくしは思いますわ。
「ありがとう…。
でも、このままではいられない。
そろそろ終わりに近づいてきたわ。
わたしとぜんちゃんの追体験の旅の。」
(今宵はここまでとさせていただきます。)
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