【オリジナル】異国小路の吸血姫　新館ノ六

355 名前：水橋 パルスィ@メイド服 ◆Parseejo 投稿日：2024/02/25(Sun) 11:57

>>331 アーチェロ公女（2/2）
―――ああいけませんわ姫様、僕に淡い期待を持たせようとはどこぞの天使と同じく酷なことをなさる。
すなわち今の姫様に想い人はいない、誰にでもその機会が開かれていると錯覚してしまいますわ。
諧謔などこの場でどうして申せましょう、期待と嫉妬で我が心は火球の如く燃えております。
羽藤侍従に誠を尽くすのであれば、姫様も想い人を持つことであくまで友愛の情であることを示されるのが至誠かと。

姫様は心憎いことを申されますね、多少なりとも名を挙げようと考える者であれば知らぬ者のない地を挙げられるとは。
いずれも今なお続く社交の中心、帝や王を廃してなお光り輝く様には羨望を禁じ得ませぬ。
我が夫や仔達は宮殿や離宮を多く造営して、尽きることを知らぬ酒食で臣民を歓待し、五千人の詩人が愛を謡い、一万人の楽師が悲哀を奏でましたものを。
全ては柱廊のみを遺して砂塵の中に埋もれるのを待つばかり、これまた嫉妬の種でございます。

私でお役に立てることがあれば何なりと、そして姫様が我が旧主に劣るとは思いません。
使い魔としてそれぞれの良さを感じております、故にいずれも唯一無二の主とでも申しましょう。
ただし総大将は安易に戦場を駆けぬもの、主君の馬前で果てることは従者の誉れ。
姫様が死ぬなと仰せならば従いますが、見せ場が無くては仕える方も甲斐がございませぬ。

天則に通じて弁が立ち、鞭や采配を存分に揮うだけが賢君ではありません。
その意味であれば、我が夫クセルクセス＜ハシャヤーラシャー＞もそうでしたが、暴君として歴史に名を留めております。
知己が多ければ多い程妬みの質量共に充実致します、姫様の人脈はキッシンジャーにも匹敵しましょう。
まずはグリッタ様との邂逅、楽しみにお待ち申し上げますわ。

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