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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ壱

481 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2016/06/22(Wed) 23:33
>>469(柚葉さん)

>ただ、この国の若い人達は未知なる存在を恐れるよりも、
>むしろそのような方々に対する憧れの方が強い傾向にあるようです。(苦笑)
>平凡な日々から自分達を解き放ってくれるような存在に対して、憧憬を抱いてしまうのでしょうね。
>これも、若者向けの文化の発展の賜物と言うのでしょうか…。

たしかに、わたくしの如き人外のものに対して、学校の皆様の態度は思いのほか打ち解けていらっしゃって
本当にありがたいことでございます

ですが…
あの、言いにくいことですが、実を申しますと…まだ打ち解けていただけない方もクラスにいらっしゃるのです
編入初日、皆様にご挨拶申しました時
『どうして…よりによってこのクラスに吸血鬼が来ちゃうの…?』
と青ざめて呟いていらっしゃった方が…

その方は、ホラーの類が大の苦手でいらっしゃるそうで、わたくしとしましては楽しかるべき学校生活が毎日わたくしに怯えて過ごされるのが申し訳なくて…
出来るだけ彼女を恐がらせないように距離を置こうと思っているのですが、悪いことには、その方のお名前が軽部(かるべ)様なのです
ですから、五十音順で出席番号がわたくしの隣で、日直のたびにわたくしと組まなければならず…
放課後の夕暮れ時、二人きりで教室に残って日誌を書いたりするなどは、彼女にとっては甚だ不本意な時間かと存じます

しかも、彼女のお宅ですが…既にご存知かもしれませんが我が家のお向かいの、あの軽部様なのですよ
ですから、通学の道も一緒でございます
日直の日は、わたくしが先に学校を出て彼女が後から帰る、というのが不文律になっておりますわ
だって、彼女の後からわたしが距離をあけてついていく、というのでは彼女としましては気が休まりませんから

彼女の警戒心を解いていただく…というのは虫の良い話と半ばあきらめてはおりますが
先日、少し波風が立ちましたわ

一昨日も日直で、日誌を職員室に提出してから、わたくし先に帰ろうかとしたのですが急に雨が激しく振り出しまして
道路も水浸しの状態、わたくし傘を持っておらず昇降口で立っておりましたら、ふと背後から
「カルミーニオさん…傘忘れた…?入っていく…?」
振り返ると、折り畳み傘を手にされた軽部さんがいらっしゃいました

小柄な彼女がわたくしを見上げる姿は、いつも以上に小さくなっているように見え、わたくしお気遣いなく、と申したのですが、
「風邪…ひいちゃうよ」
とポツリと仰って、案外に粘られるのです
そう言っていただけるならとわたくし、お言葉に甘えたのですが

帰路風雨激しく、それでもわたくしに傘を差し掛けようとなさる彼女は横殴りの雨に濡れてしまわれて…
さらには突風で傘が裏返しに広がってしまい雨はいよいよ彼女を打ち…

見かねてわたくし咄嗟に翼を広げて、彼女を雨から庇ったのですが
そうしたら彼女はいよいよ怯えた表情になってしまわれましたわ
吸血鬼の翼に全身を覆われて、言い知れぬ恐怖を感じてしまわれたのでしょう

それでも彼女をびしょ濡れにするよりはマシと思い、わたくし
「不快ではございましょうが、どうかお許しください。小雨になりましたらすぐ離れますから」
とだけ申してそのまま歩みを進めました

商店街を通っていた時、青果店のお颯様がわたくしたちの姿を認められて、
「なんだ、アーチェロ、女の子と相合傘かあ?」
とからかってこられ、周りからひとしきり笑い声が聞こえてまいりましたわ
軽部様は、不思議そうな顔をしてわたくしと周りの方々を交互に見ておられました…

軽部様とは翌日以降も変わりございませんが、少しだけ、ほんの少しだけですが、わたくしを見る表情が緩んだような気がいたします…
彼女からの憧憬などと、もちろん左様な烏滸がましいことは毛頭考えておりませんが、彼女のお心が平穏になっていただけたら、とても嬉しいことですわ


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