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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ五

272 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/04(Thu) 16:44
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

(いつの間にかこの世界で最初に降り立った、樹々に囲まれた開けた空間に戻っていました。
 ただし、あのときとは打って変わって暴風逆巻き稲光奔る大嵐となっていますが。)

これが…神々の御力。
二柱の龍神様のぶつかり合いはこれほどの猛威を周囲にもたらすのですね。
神使様、わたくしの魔力が作った防護結界はちゃんと効いておりますか?

「はい、お陰様でこうして無事にお二方の戦いを見ていられます。」

以前(>>260)姉君様から
『おそらく、あなたの力を必要とするときがあると思う』
と言われていましたが、もしかするとこのことを予想されていたのでしょうか…?

「そうかも知れませんね。
 我が主が未練を断ち切るには何らかの大きな狂瀾を避けては通れないと見当をつけていらっ
 しゃったのでしょう。」

ところで牛頭天王様はどこに?

「あの暴風雨の中で毅然としてお二人を見守っていらっしゃいます。
 『我妻と義妹となる二人を傍で見守らねばならない』とおっしゃって。」

さすが音に聞こえた剛の方。
そうであればこそ龍神様と添うこともできるのでしょうね…。

(数刻の時が過ぎて台風一過のような周囲の様子に、あらためてお二人のお力を実感いたしま
 した。)

お二人とも地面に仰向けになって体を横たえられ充足した表情をなさっています。

「姉さん、長いこと、ごめん…。」

「ううん、全然。昔の甘えん坊のあなたに抱きつかれているようで悪い気はしなかったわ。
 …わたしからの贈り物、受け取ってくれるわね?」

「うん、もちろんだよ、ありがとう…。」

「主様、姉君様、お二人ともお疲れ様でございました。
 お茶が入りましたのでどうぞ。」

(わたくしも神使様から紅茶をいただき、魔力を使った後の疲れを癒します。
 しばらく皆でほっと息を吐いて過ごしました。)

「では、そろそろ帰りましょうか?
 アーチェロさん、お母君にお声をかけてくださる?」

「はい、承知しました。
 お母様、聞こえていらっしゃいますか?
 戻らせていただきたいので、お願いできますか?」

(分かったわよぉ。
 それじゃあ、モニターに召喚魔法をかけるわねぇ。)

(わたくしたちの体が光に包まれます。)

………。
はあ、戻って来られました。
皆さん、揃っていらっしゃいますか?
姉君様、妹君様、神使様、…あ、あれ、牛頭天王様!?
え、でも、あなた様は絵の中の回想の世界の方では…?

「ああ、誤解されてしまったかな?
 わたしは吸血姫殿の母君に呼ばれてきた、こちらの世界の本物だよ。
 母君のお陰で、ようやく善女龍王殿と和解することができた。」

「わ、わたしはまだ認めたわけじゃないんですからね!
 ちゃんと、姉さんを幸せにしてくれないと承知しないんだから!」

「肝に銘じるよ。」

「ふ、ふんだ、ぜひそう願いたいわね。
 さあ、そろそろ降雨の儀を始めましょう!
 アーチェロさん、お願いね。
 わたしたち龍神の力ではなく、町の住民であるあなたの力で降らせる雨は、人と魔と神との
 絆の証しとなるのだから。」

承知いたしました。
わたくしの全力を以てこの湖を雨水で満たしてご覧に入れましょう。

(わたくしは、天に向けてかざした手より魔の力を放出しそして祈ります。
 どうか、この地が人と神とそしてわたくしたち魔にとって潤いに満ちた場所でありますよう
 に…。)

(やがて静かに雨が降り、湖の青い水面が広がっていきました…。)


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