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【オリジナル】地上に舞い降りた、飛べない天使

803 名前：水橋 パルスィ ◆Parseejo 投稿日：2023/04/18(Tue) 00:02

>>763-764 るり（1/2）
鬼は美しい姫を攫うことを生業としているわ、故に貴女を連れ去ることも本能のようなもの。
貴女には悪いけれど世界が曇って見えるのは僥倖、だって貴女の心を得るものは何から何まで妬ましいから。
攫った先には絢爛豪華な邸宅を構え、白檀麝香が漂い、繁絃急管の調べが貴女を慰め、金銀珠玉が千代に八千代に貴女の富貴を保証するわ。
篭絡するには些か不足かもしれないけれど、貴女への想いに免じてこれでご容赦を。

貴女の言っている意味で解釈していたわよ、嫉妬の妖怪が手前味噌に奔るはずがないでしょう。
ただ、貴女に相応しい存在であるために美しくある努力は続けていてよ、貴女やヴィーネのようにナチュラルメイクだけでは通せないの。
肌と髪のケアは当然としてメイクは日々流行を研究し、実践しているわ。
顔は当然として、睫毛、爪に至るまで抜かりない、ご満足いただけるかしら。

けれども時間がかかることに変わりはないわ、賽の河原の真似事は御免よ。
ただ、恋人を兼務できる可能性があれば貴女の使い魔という立場はむしろ魅力的ね、どうにも背徳的な響きを捨てきれない。
そんなものは「財団」や「GOC」が勝手に作っているもの、私の与り知らぬところだわ、私の末裔が世話になっているようだけれどね。
聞きたければ夕餉の後の寝物語にでも聞かせようかしら、今宵は仕事も休みだし一緒に寝ましょう？

それで貴女が安心を得られたのであれば願ったりよ、実践の早さを妬み、舌を巻いたけれど。
諫言できぬ友人に何の意味があるというのかしら、ただ諂い阿る佞臣に成り下がった覚えは無いし、持ったつもりもない。
今回は貴女が勝っただけ、正しい在り方と考えているわ、妬ましいけれど。
されど苦い薬の後には口直しの一つも欲しいわ、甘い飴は何かしら？

最初からやり直しとはにべもない、愛する貴女のために無い知恵を絞ったというのに。
野良猫に比べて蚤や虱は付いていないし、病気も無ければ貴女への懐き度も青天井という野良妖怪の利点を無視するというのかしら。
もふもふの増加装甲をお望みのようね、斯様なこと造作もなくてよ。
ほら、首から肩、胸と二の腕と手首、腰と太腿にファーを付けてみたわ、どこでも存分にもふもふなさい。

随分と難しいことを聞くわね、高いわよ？
何が「大人」か―――古の儒哲に倣うのであれば何のために何をするべきか理解し、行動に際して惑うことなく恣に振舞っても道徳規範に背かぬ姿かしら。
お酒に当てはめるのであれば、綺麗に呑むことから始めれば良いと思う。
呑み方の所作は元より、余人に絡まず、零した時にはテーブルや口を清め、勘定もその場その場で後腐れ無く呑むことだと思うわ。

あら、「免罪符」は地上の教会の専売特許だったかしら、天使様から購うのは無理ということ？
友情と愛情は境界の曖昧な概念よ、両立し得るしふとした切欠でどちらかへ転がることも大いにあり得る。
境界線が仮にあるとして乗り越えることは寛恕願いたいものね、貴女と恋仲になることを目的に近付いているのだから。
貴女の心を得るまでに私の心は太陽の下百の苦痛と慨嘆に悩まされ、月の下で幾十万の悔恨と悲哭に打ちひしがれなければならない。

なんということを言うのかしら、言葉を軽んじれば私の命さえ鴻毛の如く吹き散らされるわ。
懊悩の果てに紡ぎ出す言葉ですら貴女の心に届かず、貴女によって灯された心の火は私の一切を燃やし尽くしそうだというのに。
たとえ貴女と隔てられたとすれば四方世界は元より、三千世界の一切を尋ねまわることさえ厭わない。
無理をするなということがまず無理よ、貴女の居ない世界など私の涙で沈んでしまうことでしょう。

心を読むのは心を糧とする妖怪の特権よ、それとも天使様は橋姫か覚＜さとり＞の仲間入りをご所望かしら。
仮に貴女が色恋を知らぬまま大天使になったとしましょう、人間の善悪を見定める上でそれを斟酌しなくなるのではなくて？
―――神は人間に繁殖し、天地の一切を神に代わって支配することを命じた、されどそれは家畜の如く牡牝を掛け合わせて増やすやり方ではない。
相互の合意の下に周囲から祝福されて番＜つがい＞になることを嘉する筈、側近く仕える貴女がされを解さずしてなんとする。

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