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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ五

236 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/07/13(Wed) 11:54
>>230(柚葉さん)(続きです。)

(屋敷裏の泉で身を清めてから鍾乳洞にまいりました。)

…いけないわね。
いくら我が心を鎮めようとしても、柚葉のうなじがわたくしに委ねられると思うと、胸の高鳴りが
抑えられないわ。

さあ、今のこのときは、あなたはわたくしのもの。
『贄の血』を我が内に納め、我が全霊を以て無二の魔珠と為し、湖の主へ代償として捧げるは今
なれば。
(わたくしは柚葉のうなじを牙で穿つ。)

…ありがとうございました、柚葉さん、至福の刻(とき)をまたくださって…。
今こうして両手のひらの上に浮かぶ光の紅玉、これが二人で作った魔の珠でございます。
これを湖の主様へと捧げましょう。
(珠はゆっくりと手のひらから離れて水面へと吸い込まれていきました。)

あ…、湖面が光って人影が現れてまいりました!
とてもお美しい女性の、服飾の歴史本で見た飛鳥時代の女官の朝服のようなお召し物を着たお姿
ですが…。
お腰から下にはなんともお美しい金色(こんじき)の鱗で包まれた長い尾を持つ…「ラミア」の方
かしら?

「この珠をくれたのはあなたたち?
 驚いたわ、こんな高い霊力の珠は見たことが無いわ。
 おかげでこうして顕現できるほど、高い『存在の階梯』を取り戻せたわ。

 ああ、そうそう、挨拶よね。
 はじめまして。
 わたしは娑伽羅龍女(しゃがらりゅうじょ)。
 八大龍王が一尊、沙掲羅龍王(しゃかつらりゅうおう)の三女よ。
 そして、この鍾乳洞の主(あるじ)…、といっても封印されている身だから、これこのとおり
 影が薄いのだけれど。」

ご顕現、感謝申し上げます、娑伽羅龍女様。
わたくし伊太利亜よりまかりこしました吸血姫アーチェロ・ディ・カルミーニオ=ミズリーナと
申します。
ご尊顔を拝しまして光栄でございます。

「さっき思念を送ってくれていたみたいだけれど、この鍾乳洞の石を『ぜんちゃん』へのお土産
 に持って行っていきたい、という話だったわね?
 うん、全然かまわないから持って行って。」

『ぜんちゃん』…とは?

「善女龍王だから、ぜんちゃん。
 あの子とは双子の姉妹なの。
 では、紅玉の半分を使うわね。」

(龍女様の手にされた魔珠が二つに分かれます。
 そして湖を覆う岩壁から次々とレインボームーンストーンが離れ、その魔珠と一体になりいっそ
 う鮮やかな虹色に変化しました。)

「はい、どうぞ。ぜんちゃんによろしくね。」

寛大なる思し召し、ありがとうございます。
…それであの、失礼ですが、今おっしゃった「封印されている身」とは一体どういうことでござ
いますか?
なにかお困りのことがありましたら、及ばずながら我が魔力を以て助勢させていただきますけれど?

「ああ…、その辺の事情は知らないのね?
 ええっと、わたしとぜんちゃんとは双子の姉妹なのだけれど、あの子がね、わたしのこと封印し
 たの。
 いえね、昔竜宮に居たわたしに牛頭様…牛頭天王という方との縁談が舞い込んだんだけど。
 当時は彼すごく周囲から恐れられていたのね。
 顔がいかつくて恐い、背丈が7尺5寸(約227cm)もあって恐い、さらに大きな角があってこれ
 また恐い、と言われて。
 お会いしたらとても良い方で、わたしは喜んで嫁いだのだけれど。
 でも、快く思わない人たちもけっこういたの。」

風蘭様…いえ、わたくしの知り合いの男性でさらに背の高い偉丈夫(240cm)の方がいらっしゃい
ますが。
いるのですね、洋の東西を問わず、そうして色眼鏡で見る人が。

「で、ぜんちゃんも、わたしが父に言われて泣く泣くお嫁に行ったと誤解しちゃって。
 牛頭様の隙をついて、わたしをこの鍾乳洞に封印して隠した、というわけ。」

それは、またなんとも…。
わたくしが口を挟むのも不遜ですが、妹君の誤解を解く手立てはないものでしょうか…。

「うーん、あの子は頑固で聞かん気な質だから、口で伝えても素直になれるかどうか。」

(ご姉妹でご気性が分かる分、悩みも深いようですね…。)

「それならこの子に一口かませてもらえないかしらねぇ?」

「お腹空いた…。」

(さらに続きます。)

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