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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ四

915 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2021/12/04(Sat) 21:07
(続きです。)

>>903(柚葉さん)
>>911(グリッタちゃん)

(「ラ・ロイヤル・スパ」でございます。)

まあ、これが…。
広々として落ち着いた色合いの石とタイル造り、そして平城宮跡の一角から湧き出る湯は見るからに艶々と
しております。
さすがは筋肉もしくは関節の痛み、こわばりに高い癒しを発揮しその他豊富な効能を謳っているお湯、湯船に
そっと手を差し入れただけでこの身をゆるゆると安らがせてくれるようですわ。

サライ様、お人払いどうもありがとうございます。
この湯浴みはゆっくり楽しむだけでなく時間を有効に使わせていただき、白夜様のお話を聞かせていただき
ましょう。

>…多分アーチェロさんたちは、この後少し大事なお話があるかも知れないですね。
>もう十分温まったし、そろそろ私は席を外そうかな。

「ええっとお〜、遠慮されたら申し訳ないし〜、いてくれていいんだけど〜。
 白鹿ちゃんが気になるだろうし、どっちでも良いようにしてね〜。

あはは〜、なんだか申し訳ないことになっちゃったな〜。
 ほんと、そんな大した話じゃないんだよ〜。
 佐保ちゃんとあんまり話せてないのも、ただのわたしのつまんない拘りみたいなものだし〜。」

「…いや、わたしはとても怒っているぞ。」

「はえ…?佐保ちゃん…?」

「わたしに負担をかけまい、とろくに相談してくれなかったそなたと、そなたに頼られぬ不甲斐ない自分、
 双方に、の。」

えーっと…。(汗汗)

「ああ、いいからいいからぁ、アーチェロは言ったとおり背中流してあげてくれないかしらぁ。」

はい、お母様、もとよりそのつもりでございます。
ささ、白夜様どうぞおかけになって…。
…え?
――――――――――――――!?

(背中…お背中一面の傷跡、それも、塞がりきらない切り傷、刺し傷、あざ、こちらは…鞭の跡?)
そ、そのお背中は…。

「あはは〜、昔々の傷だよ〜、そんなに驚かなくても大丈夫だよ〜。」

いえ、ですが、こんなにたくさんの傷跡が癒えぬまま残っているなんて。
貴女様ほどの大妖怪なら、たとえ人間に傷つけられようと普通傷は治癒されるはず…。
…普通では、ない?
では、これは魔術・魔道を知る者たちの手で…?」

「…知ってるかもだけど〜、わたしあちこちの人間の偉い人をたぶらかしたから、これはその報いみたいな
 ものだし〜。
 あはは…。」

「まあ、確かにたぶらかされた連中は多いけどねぇ。
 アーチェロも見たでしょ?
 新幹線の中の通路、さっきの公園の中、白夜ちゃんの方をチラ見しては赤くなっている人たちがいたのを。
 確かにこの娘、隙が多くて霊気漏らしちゃうことが多いから、そりゃあもう昔から入れ込む連中は多かったわよねぇ。」

お母様、ですが、ですが、こんな…。

(続きます。)


916 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2021/12/04(Sat) 21:12
(続きです。)

>>903(柚葉さん)
>>911(グリッタちゃん)

「だけどさぁ。」

(!お母様の周囲の空気が一気に下がった?)

「わたくしもよくこの娘のところに遊びに行ってたから知ってるけどぉ。
 この娘が、魅了された奴らが熱に浮かされて逆らえなくなるほどの魔の気を発していたのを見たこと
なんて一度も無かったわよぉ。
 あいつら、自分の務めをそっちのけにして『余にはそなたさえ居れば良い』とか抜かして、あれやこれやを
 つぎ込んで、あげく周囲の敵意やら憎しみがヤバいレベルだと気づいた途端に『この女狐にたばから
れたのだ!』」と言っては金と権力で雇った魔道に長けた連中にこの娘を害させた…、まあ呆れるほど
 ワンパターンだったわねぇ。
 この娘もぉ、よしゃあいいのに、責務の重圧で苦しんでる連中をほっとけない情の厚さが毎回毎回あだに
なるしぃ。」

「うん、だからね〜、学習能力のないわたしもね〜、悪いんだよ〜。」

…それで、保身を図った人たちによって、ずっと白夜様はこうして責め苛まれてきたと?
自分の弱さから起こした揉め事の責任をなすり付けた人々の手によって、こんな傷を負わされた、と?

(狂おしく叫び出しそうだ。
 ダメよ、今わたくしが怒って喚いて、何が変わるの?
 今わたくしがすべきはただ、旅の癒しの湯浴みの良き時間をこの方に過ごしていただくこと、それだけ。)

「姫様、唇から血が…。目からしずくが…。」

ご、ごめんなさい、長女ちゃん。
ちょっと驚いてしまっただけだから、大丈夫。
白夜様、お辛い話はどうかもう…。

「ん〜、どっちかというとここからが今回の旅に関係する話になるんだよ〜。
 ごめんね、ヘンな話しちゃって〜。」

いえ、ではどうかお聞かせくださいませ…。

(続きます。)


917 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2021/12/04(Sat) 21:13
(続きです。)

>>903(柚葉さん)
>>911(グリッタちゃん)

「ん〜とね、そんなわけでいろいろあってもう嫌になっちゃってね〜。
 それで人間のいないところに行こう、って思ったんだよ〜。
 人がいると、なんでかすぐに関わり合いができちゃうから〜。
 この際だから、もう思いっきり今まで知らない場所まで行こう、ってことで、大陸をどんどん北へ北へ
と行ってね〜。
 とうとう、とってもきれいな毛並みの仲間…ホッキョクギツネたちのいる場所まで行っちゃったわけ〜。
 あの子たちのいる場所って、自然が厳しいからね〜、わたしも獲物を捕るお手伝いをして、お友だちに
なれたよ〜。

 でもある日、そんなところで見つけたんだよ〜。
 白夜の中、体を地面に横たえて雪に埋もれかけていた『あの人』を。」

白夜の中…。

「そして今『風蘭寺』にいる、それが『あの人』だよ〜。
 『風蘭』はあの人の呼び名からつけたの〜。」

…?
風蘭、ふうらん、フウラン…、フラン…。

!!
北極で身を横たえていた、フ、フラン…。
あ、あの、その、まさかですが。
それは『メアリー・シェリー』の記録文学に書かれたあの方…?

「うん、その人だね〜。」

…ですが、あの著書によれば、確かあの方は薪の山に登ってご自身を焼いて果てる、とおっしゃっていた
と記憶しますが。

「うん、そのつもりだったんだけど〜、力尽きて行き倒れたらしいよ〜。
 それでまだ息があったから担いでお空を日本まで飛んできたの〜。
 仲良しになったホッキョクギツネさんたちも一緒に〜。
 でも、その時はあの人のこと、そんな有名人だって知らなかったんだけどね〜。」

「そして旧友であるわらわのもとに身を寄せたのだがね。
 最初から二人とも諍いが絶えなかったようだよ。」

「だって〜、あの人すごいんだよ〜。
 わたしが優しくしてあげても、全然喜ばないの〜。
 『余計なことをしてくれた、わたしは罪深い身だ。あのまま息絶えるべきだったのに。』
 って言って怒るんだよ〜。
 あんな人初めてだよ〜。
 で、わたしも、だんだん自分が悪いのかな〜、って思えてまた嫌〜になったから、お寺作ってあの人
放り込んだら逃げちゃったの〜。」

「うむ、慕ってついて来てくれたホッキョクギツネたちに後のこと丸投げしての。
 あの者たち、今も人の姿で寺を守ってくれているんだよ。
 さっさと顔を出して、謝ることだね。
 『彼の者』が何度も逃げ出そうとしたり身投げしようとしたりして、かなり困っておったでな。」

「うん、反省したし、こうしてみんなと楽しく過ごして元気をもらえたから、旅行の最終日に顔を出す
 よ〜。
 ね?もう少し、一緒にいていいかな〜?アーチェロさん。」

もちろんでございます。
そして三日目はぜひわたくしも風蘭寺に同行させてくださいませ…。

ですが今は。
柚葉さん、申し訳ございませんが、どうか貴女の尊い治癒のお力、この方にお使いいただけませんか?

(今宵はここまでとさせていただきます。たいへん長くなり申し訳ございませんでした。)


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