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【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ五

1 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/01/04(Tue) 07:59
皆々様、新年おめでとうございます。
厳寒の候、どうぞお体ご自愛下さいませ。

わたくし、イタリアより参りました吸血鬼のアーチェロ・カルミーニオと申します。
お蔭をもちましてこの度、ここに新館ノ五を立てさせていただきました。
何卒よろしくお願いいたします。

(過去スレ)
【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ壱
http://www.10ch.tv/bbs/test/read.cgi?bbs=narikiri&key=461367355
【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ弐
http://www.10ch.tv/bbs/test/read.cgi?bbs=narikiri&key=478946904
【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ参
http://www.10ch.tv/bbs/test/read.cgi?bbs=narikiri&key=519003578
【オリジナル】異国小路の吸血姫 新館ノ四
http://www.10ch.tv/bbs/test/read.cgi?bbs=narikiri&key=593906122

まずは、自己紹介させていただきます。

名前:アーチェロ・ディ・カルミーニオ=ミズリーナ
   普段はアーチェロ(名前)・カルミーニオ(姓)と名乗っています。
性別:女性
年齢:565歳
   なお、ここでは年を経ても年齢は固定されています。
   長期連載されている日常系の作品と同じように考えて頂ければ幸いです。
容姿:身長168cm。体重0〜53kg(『実在のレベル』を変えることで体重も増減するのです)。
   B85. W55. H82。
   髪型はストレートロングの銀髪です。
   日本で『外人』とよく言われますところの西洋白人の容貌です。
   口内に鋭利な牙があり、必要に応じて背中よりコウモリ型の翼を出すことがございます。
好きなもの:家族・友人 お昼寝 甘酒
嫌いなもの:家族・友人に仇なす者 流血沙汰
その他自己紹介:
   中部イタリアに領地をたまわる侯爵家にて生まれ育った吸血鬼の小娘でございます。
   もともと領地の人間に興味を持ち、恐れられるのも省みず仲良くなりたい想いで過ごした数百年を
   経て、伝え聞く日本国、人と神々と妖(あやかし)が共に在るこの国への憧れを募らせて、一族
   郎党の制止を振り切ってこの地へ参りました。
   今はこの緑豊かな地方にて古き屋敷に家族とともに住み、ご近所の方々とおつき合いさせて
   いただいています。

以下、お願い申し上げます。

・ご近所同士、マナーをお守りください。
・セクハラや猥談、誹謗中傷はお控えください。
・名無しさん同士で過度に話し込むのもお控えください。
・その他、荒らしや迷惑行為に該当するような言動はお慎みください。
・初めていらっしゃるキャラハンの方は以下の各項目をご記入ください。
名前:
性別:
年齢:
容姿:
好きなもの:
嫌いなもの:
その他自己紹介:(何かあれば)


262 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/02(Tue) 09:53
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

(仙境とでも申しましょうか、森閑とした樹々の間を進んでいたわたくしたちはしばしの休憩を
取っております。)

「麦茶と紅茶をそれぞれ魔法瓶に入れて持ってきました。
 お好きなほうをどうぞ。」

ありがとうございます、では紅茶をいただきますね。
ふう…、長く歩いた後で潤いが全身に染みわたりますわ、ありがとうございます。

しかし、ずい分歩いた気がいたしますが、この世界は本当に絵の中か、と思うほど広いようです
ね。このようなペースで大丈夫なのでしょうか?
(モニター越しにわたくしたちを見ている方々にあまり長く待っていただくのも…。)

「オルキデアさんが言っていたけれど、モニターの向こうでは私たちの様子は断続的に見られて
 いて、そんなに時間は経たないから大丈夫だそうよ。」

「ふむ、さっきアーチェロさんが言っていた『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くん
 と解説の小林さん』略して『ツンリゼ』で、遠藤くんと小林さんがゲーム内の長い時間の経過
 をモニター越しに断続的に見ているようなものなのですね。」

あら、神使様も「ツンリゼ」をご存じなのですか?

「はい、コミック版を電子書籍で読んでおります。わたしのお気に入りの漫画の一つです。
 ただ、電子版ですと8月1日に発売される第5巻に特典ドラマCD付いておりませんので、
 こちらは書籍版を通販で買うつもりです。」

山奥にいらしても現代のエンタメを楽しんでおられるのですね。

「かつて草双紙を手に入れるのに行商の手で貸本が届けられるのを今か今かと待っていた頃とは
 文字どおり隔世の感です。」

(取り留めも無くお話をしてから再び立って歩き始めました。)


263 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/02(Tue) 14:13
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

(森を抜けて人里にまいりました。)

農村のようですね。
子どもたちが道端で遊んでいますが、装束からして室町時代あたりでしょうか?
いかに娑伽羅龍女様からお話を伺ったとは言え、こんなにもリアルに過去の世界を描出する
なんて、画家のお嬢様はやはり天才ですのね。

「いたわ、ぜんちゃん。」

え、子どもたちの中にですか?
…ああ、たしかに…、というかずい分お若い姿になって子どもたちに交じってはしゃいでおい
でですが…。

「絵の中の世界ですからね、わが主も童心に帰って、それに見た目も引っ張られるとあのよう
 なことも起こるのでしょう。」

しかし、子どもに戻っただけではなくて、半ば本性が…お腰から下が龍のお姿のままですけれど、
子どもたち不審に思わないのかしら?

「子どもたちが『今度は鬼ごっこしようよ、水神様』と言っていますよ。
 神様と分かった上で遊び戯れているのですね。」

…なんとまあ。
いにしえの時には、このように神と人とか交友していたこともあるのですね。
人間たちから恐れられ敵視されてきた身としては羨ましいですわ…。

「ちょっと、わたし交ぜてもらってくるね〜。」

あ、娑伽羅龍女様、子どもたちのところに行ってしまわれましたね。
あらあら、善女龍王様、姉君の登場にギョッとしていらっしゃいますが、子どもたちは神様が
増えた、と大喜び。
妹君もちょっと何かおっしゃりたそうですが諦めて鬼ごっこを始められましたね。
ようやくお二人ご一緒になれましたが、この後上手くお話することができるのでしょうか…。

「子どもたちと一緒にけっこう楽しそうですよ。
 急がば回れ、と申します。
 しばらくは無心に遊んでいただいた方が気持ちがほぐるかも知れませんよ。
 どうでしょう、せっかくですからわたしたちも交ざりませんか?」

え…?でもわたくしこのとおり銀髪で青い目の外国人の姿ですから…。

「子どもたちにはわたしから神様の一人だと紹介しますから、きっと大丈夫ですよ。」

(神使様に誘われ、しばらく子どもたちと鬼ごっこに興じました。)

(つづきます。)

264 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/02(Tue) 18:09
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

日が暮れて子どもたちとの戯れが終わったら、善女龍王様はまた逃げ出してしまわれて。
モニターの向こうではさして時間が経っていないにしろ、こちらは日にちを費やして本格的に
長旅になってきましたね。

「でも、ぜんちゃんの『気』はずい分濃く残っているわ。後を辿るのはとても容易よ。
 わたしたちがかつて遊び歩いた村や町を渡り歩いているみたい。
 わたしにとっても懐かしいわ。」

もしかして、わざとそうしていらっしゃるのでしょうか?
姉君がご自分を追って来られることを期待しておられるのでは。

「だとしたら、この町で行くところは心当たりがあるわ。
 わたしたちが一緒に遊んだ…というか悪戯をした場所ね。
 それは夜のことになるから、昼間のうちに少し町を歩いてみない?」

(娑伽羅龍女のお誘いで、三人で町を見て回りました。)

昨日見た農村よりも時代が下っている気がしますね。
町の人々の風俗を見ていると。

「我が主の記憶の反映ではないでしょうか?
 ランダムに思い出すままに過去の世界がここに反映されて、そうなっているのではないかと。」

では、次はまたずっと過去に遡ることもあると?

「ええ、よく昔の話を時代を問わず色々聞かせてくれますから。」

(日が落ちてから、娑伽羅龍女様のご案内で町はずれの池に参りました。)

「ここは鴨の肥育池でね、お魚を獲ることは禁止されているの。
 なのに夜中にこっそり魚を釣りに来る不届き者が後を絶たないの。
 ほら、いまもあそこに釣って帰ろうとして男がいるでしょう?
 だから、ちょっと脅かしてやるのね。
 あ、いたいた、あそこにいるぜんちゃんと一緒に、こうしてね。」

娑伽羅龍女様、妹君のところに行かれましたけれど、もしかして。

「主と一緒にちょっと悪い笑顔をなさっていますから、あれでしょうね、多分。」

(お二人の、普段とは違った恐ろしげな低音ボイスが一体に響き渡りました。)

「おいてけ〜。」

「たちされ〜。」

釣り人達が青くなって逃げていきますわ。
やっぱり、ポピュラーな怪談でしたわね。
お二人が会心の笑顔を浮かべていらっしゃいます。
本当に身も心も童心に帰っていらっしゃるようですね。

「でも、主の脅し文句は最近視たアニメの幼女幽霊を思い出しますね…。」

(つづきます。)


265 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/03(Wed) 16:59
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

「麦茶です、どうぞ。」

ありがとうございます、旅の道中にのどを潤すのはとても心地良いです。
水筒だけでなく、茶葉や麦茶の素の大麦も用意してくださって、湧水を見つけてはお茶を淹れ
てくださる。見事なお手際ですわ。」

「これでも侍女の端くれですから。」

ですが…、あなたの主様がああして妖怪と戦っているのに、わたくしのんびり見物させていた
だいていてよいのでしょうか?

(漆黒の空の下、水田の上の中空で龍神のお二方が3対の腕を生やした巨大な妖怪と稲光を迸ら
 せながら戦っておられます。)

「人に災いをなす者を退治するのは主の喜びとするところですからお気になさらなくても大丈
 夫ですよ。
 特にあの?乱鬼(そらんき)なる輩は日ノ本の農村にしばしば現れて害をなしますから、主に
 とっては手慣れた相手です。
 羽黒修験の書『拾塊集』では慶雲年間(704〜708年)、既に庄内の地で疫病により多くの命を
 奪い、12人の修験者によって退散させられた、と記されています。
 今龍神の御姉妹が戦っている姿は、その書にあるとおりの背丈8丈(約24メートル)あり
 ましょう。」

あの姿、見た目だけでなく妖気もまた強大なものを感じさせますね。
出撃していかれるときのお二人からの
「安心して。あれはわたしたちが調伏する。」
との頼もしいお言葉が無ければ、わたくしも矢も楯もたまらずあの中へ飛び込んでまいるところ
でした…。

(やがて、空気を切り裂く雷(いかずち)と断末魔の咆哮とが轟き、赤黒い消し炭となったもの
 が地上に落ちました。
 虚空にはなお二柱の姉妹神が佇んでおられます。)

…お二人の神々しいお姿…やはり神様でいらっしゃいますね。

(つづきます。)


266 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/03(Wed) 17:06
訂正です。

>>265
>特にあの?乱鬼(そらんき)なる輩は日ノ本の農村にしばしば現れて害をなしますから、主に
 とっては手慣れた相手です。

「?」のところは「鹿」を三つ書く字なのですが、環境依存文字でここでは形を成せないようです。
失礼いたしました。

267 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/03(Wed) 19:57
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

今日も姉妹龍神様が「禍々しき妖怪」と見定めた者との戦いを繰り広げていらっしゃいます。
幾度目かの悪妖怪調伏、これまでどおり神の力を以て簡単に片が付くものと思っていました。
ですが…。

「むう、今日は何か今までと違ってただならぬ様相…。
 お二人が連携して激しく攻撃を繰り出しているのに、それをかわす敵の動きは余裕綽々です。」

本来わたくしも先日思ったように助力すべきなのでしょう。
ですが…。

(わたくしは両手で顔を覆って他所を向いてしまいます。
 あの難敵の正体を直感し、「まさか」との思いから正視できません。)

「ああっ!?敵の放った闇の魔力がお二人を弾き飛ばした!?
 我が主も驚きの眼差しで敵を見据えています。」

「我等の攻撃をたやすく凌ぎ切るとは、お前は…何者だ?
 若い娘を襲おうとした不届き者の分際で、神の力に逆らうとは一体。」

「ふん、なんじゃ、物惜しみするのう。
 別にあの娘を殺めようというわけではないわ。
 少しばかりわたしの空腹を満たしたくて、ほんのちょっとだけ血を分けてもらおうと思うた
 だけなのに。」

あああ…、やっぱり。
体から発散する魔の気と背中の翼とあの牙とで予想は出来たけれど。

「つまりは…外国(とつくに)より来たりし彼の世界の大妖、人の血を以て精を得る者か?」

「そう、わたしは異郷の闇にて顕現せし者にして、未来永劫『真祖』と呼ばれるであろう者よ。」

!!

「安心せよ。この地の神々を敵に回して戦をするのは本意ではない。
 いずれそのうち我が血脈の者がこの地で世話になるかも知れぬからな。
 我は退散させてもらう。
 …そう睨むな。
 我よりもっと面倒な敵がこの国にはおるだろうに。」

「なんのこと?」

「気がつかないか?
 いまだ若き神よ。
 なら、いずれそれらと出会い、己のこともより深く知ることになろうよ。」

大きな翼を広げて去っていくその姿を、わたしはただ棒立ちのまま見送ることしかできません
でした。

「飛んでいってしまいましたね…。
 あの、アーチェロさん、今のはもしや…。」

…はい、おそらく。わたくしも初めて、本当に初めてお目にかかりましたが。
わたくしの直系の祖先、「真祖」と呼ばれる方。
お二方、もしや知っていながら今まで、わたくしに黙っていてくださったのですか…?

「あ〜、色々懐かしいことを追体験していて、ふと思い出してしまったみたい。
 ね、ぜんちゃん?」

「ああ…、嫌な思いをさせてしまったかな?
 うかつだった、申し訳ない。」

そんな…、あの、わたくしの先祖こそお二人にご迷惑をおかけしてしまって、申し訳ございま
せん。

「ううん、あの方との出会いは今の一度だけだったのよ。
 そして、彼女の言ったことは本当だった。わたしたちはこの後『もっと面倒な敵』に遭った
 のだったわ。
 ねえ、ぜんちゃん。…この後どうする?」

「わたしは追体験を続けたいと思う。
 そうすれば、もっと自分の心に向き合えそうだから。」

「そうね、わたしもそう思うわ。
 アーチェロさん、神使ちゃん、申し訳ないけれど、もうしばらくつき合ってもらえるかしら?」

はい、わたくしでよろしければ喜んで。

「もとより。わたしは侍女なのですから。」

(その夜、神使様がわたくしに淹れてくれた紅茶は、ことのほか心に温かく感じられました。)

(つづきます。)

268 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/03(Wed) 22:19
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

強き者の怒号。弱き者の哀訴。
強き者の打擲。弱き者の悲鳴。

こんな酷い光景を見ているしかないだなんて…。
不作でわずかに収穫を見たお米が役人の手によって奪われていく。
僅かな雑穀しか手元に残らず何とか目こぼしをとひれ伏して願う農民に無情の鞭の雨が降り
かかる。
これが「徴税」ですって?ただの略奪ではありませんか。

「これは画家のお嬢様が描いた、過去の世界の再現です…。」

お嬢様はこんな酷薄な場面を描いてはいらっしゃらないはずです!
それに神使様も、辛そうな顔をしていらっしゃるではありませんか。

「姉神様の情念と記憶がお嬢様の筆を通してここまで再現したのでしょう。
 甦る記憶のままに克明に。
 任せるしかありません、我が主と姉君様に。
 それを見届けるためにわたしたちはここにいるのですから。」

(今お二方はこの地の社の巫女さんとして農民のために、役人に無体なことをするな、と申し
 立てていますが。)

これは…、かえって火に油の様相では?

(傲岸な表情を浮かべた役人が姉君様の襟首をつかみ、姉君様は − 。)

龍神の本体を顕現されましたね。
これで役人も畏れ入って平伏するのでは?

「…どうやら、そうはいかないみたいですね。」

(周章狼狽した役人が刀を抜いて姉神様に切りかかります。)

お馬鹿さんね、あんなものではかすり傷一つ付けられるわけも無いのに。

(そう思っていたわたくしは次の瞬間愕然としました。)

「やめろー、かみさまになにするんだー!」

(彼女を慕っていたのであろう小さな子どもが姉君様の前に立ち、白刃がその首へ!)

「ぐわっ!」

「間一髪ですね!さすが我が主、役人をひっぱたいて刀の軌道を逸らしました…が。」

逸らし切れず、子どもの腕に切りつけられて!
も、もう、わたくし我慢できません!

(飛び出したわたくしは、子どもを抱きしめてそのまま飛び上がります。)

「よかった…、お二方、この子の傷は浅いです、すぐに治療を…。
 あの…、姉君様?
 その立ち昇るオーラは、怒り…?」

「許さぬ…、許さぬぞお、貴様らあーーーっ!!」

こ、これは、一天にわかに掻き曇り、稲光が。これは不穏すぎます。
嵐が、嵐が呼ばれています!
姉君様、どうかお静まりを。
って聞こえていないのですかーっ!?

(嵐はたちまち大水を招き、そしてあたり一面濁流と化しました。)

信じられません…。
これが、あの、お優しい姉君様の為していることなのですか?

(数刻の後、嵐は治まりました。)

「アーチェロさんに感謝します。
 昔と同じ場面の繰り返しと思って激高してしまったけれど、子どもは切り殺されなくて済んだ
 のね。
 それでかつてのそのときよりも早くに正気に戻れて誰も死なせずに済んだわ。
 あなたたちが村人と、ついでに役人も避難誘導してくれたからだけど。
 記憶の中の世界だけれど、やはり人を殺めるのは嫌…。」

お役に立てたのなら幸いです…。

「ごめんなさい。
 もう気が付いたかしら?
 『真祖』の方が言っていた『もっと面倒な敵』が何かを。
 そう、わたし自身よ。
 ふだんは大人しいふりをしていても、わたしの本質は荒魂(あらみたま)。
 こうして人に簡単に災いを為してしまうのよ。」

でも、お怒りになられたのは農民のため、なかんずくあの子どものためだったではありませんか。
やはりお優しいのがあなた様の本質だとわたくしは思いますわ。

「ありがとう…。
 でも、このままではいられない。
 そろそろ終わりに近づいてきたわ。
 わたしとぜんちゃんの追体験の旅の。」

(今宵はここまでとさせていただきます。)


269 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/03(Wed) 22:49
補足です。

>>268
>アーチェロさんに感謝します。
>昔と同じ場面の繰り返しと思って激高してしまったけれど、子どもは切り殺されなくて済んだ
>のね。

姉君様がわたくしに感謝を述べてくださったのは、わたくしが傷ついた子どもにヒーリングを
施したからです。
わたくしのヒーリングはあまり上手くはありません(うっかり誤ると相手を眷族にしてしまい
かねません)が、幸い子どもは無事回復いたしました。


270 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/04(Thu) 11:20
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

(夜風に吹かれたさざ波が浜辺に打ち寄せる音は心落ち着かせるものがありますが、今わたくし
 は緊張のただ中にあります。)

「アーチェロさんが殊更に畏まる必要ないのではないかと。
 今あの方が竜宮よりいらしたのは、あくまで我が主と姉君様に御用があってのことなのです
 よ?」

そうはおっしゃいますが、神使様。
あの方が竜宮の主、姉妹龍神様の父君であられる沙掲羅龍王(しゃかつらりゅうおう)様だと
思うと、緊張が解けないのですよ。
喉も渇いてまいりました。後で紅茶をいただきとうございます。

(わたくしたちがヒソヒソ話している間も、龍神の父娘の会話が進んでいます。)

「娑伽羅。このたび村に水を溢れさせたこと、まことに不行き届きだ。
 民を怯えさせ作物を損なったことばかりではない。
 颱風や洪水などの災害は疫病を流行らす。
 そなたの一時の激情がもたらした結果として、な。
 そなたは己が荒魂(あらみたま)と未だ向き合えておらぬと見える。」

「父様、此度のことは姉様のせいばかりではありません。
 一緒に居てこの事態を防げなかったわたしの罪でもあります。」

「善女、そなたは姉の荒魂と対をなす和魂(にぎみたま)の持ち主であるが。
 そなたに任せきりにしたのはわしの落ち度であった。
 娑伽羅、そなたには疫病調伏の神に嫁してもらう。
 既に今回の件でも彼の神が動いてくれている。
 彼と共に在らば、此度のような落ち度があっても、疫病を流行らすこともあるまい。」

「疫病調伏の神様、と申しますと?」

「『牛頭天王』殿だ。
 そなたも名前くらいは聞いたことがあるだろう?」

「そんな!姉様が、け、結婚?お嫁に行く!?
 いきなりそんなの横暴、横暴です!」

…縁談の当のご本人である姉君より妹君の方が、即行で反応しましたね。
なんだか、もう必死のご様子で。

「我が主は姉スキーを拗らせていますから。」

必死に言い募ってだんだん顔つきが険しくなってきましたけれど、大丈夫でしょうか?

「だいいち、彼の方は容貌魁偉で暴戻矯激ゆえ誰も傍に寄りたがらないと…。
 そんな方が姉様と夫婦(めおと)になるなんて。」

「ぜんちゃん、見かけや風評で人を貶めてはいけないわ。」

「だって、姉さん…。」

「さすがに我が主も分が悪いと感じているようですが、すごく口惜しそう。
 …おや、これは不思議ですね。」

どうかされましたか?

「いえ、わたしが主から聞いていたところでは、実際の見合いの席が設けられたのはきちと日取
 りを決めてからのことだったと聞いていますが。
 それなのにほら、父君の横に立たれて紹介されているあの方、あれは牛頭天王ご本人ではない
 かと。」

まあ、あの方が?
確かに偉丈夫でそして大きな角を生やしていらっしゃいますね。
そして疫病調伏の神様らしい戦装束がとても似合っていていらっしゃいます。

「娑伽羅龍女殿、ならびに善女龍王殿、お初にお目にかかる。
 今ご紹介に預かった牛頭天王だ。
 急な話で戸惑っておられるだろう。
 わたしとしては娑伽羅殿の無理強いをするつもりはない。
 ただ、わたしのことを知ってもらう機会を与えてもらえないだろうか?」

(つづきます。)


271 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/04(Thu) 15:34
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

「悪疫退散!」

まあっ、悪疫の妖怪をいともたやすく消滅させてしまわれました。
今の世は牛頭天王様や彼の妖怪アマビエ様に疫病退散や健康を祈願する民間信仰が盛んだと聞き
ますが、そのご活躍を目の当たりにできるなんて。
誠に凛々しいお姿ですね。

「水清月宿!」

そして悪疫が去った土地に、今度は姉君様が水脈より水をお呼びになり土地を潤していかれます。

「これが『琴瑟相和(きんしつそうわ)』と申しましょうか、まことに良き夫婦の共同作業です
 ね。
 ねえ、我が主?」

「なんでこのタイミングで私に声をかけるの?
 それに二人はまだ夫婦ではない!」

「ですが、姉君様は悪妖怪退治に力を使わずに済み、その結果荒魂(あらみたま)を発現しな
 いでいられるのですから良いではありませんか。」

「う〜う〜。」

「反論できないからって、膝を抱えて背中向けないでくださいよ。」

あの、善女龍王様。
わたくし如きが口幅ったいとは思いますが、牛頭天王様は決して姉君様のことを粗略にされる
ような方ではないと思うのですが。
先日の出会いからこの方、ご一緒に旅をしてまいってお二人の互いを尊ぶお姿は決して形だけの
ものではないと愚考いたします。
もちろん長きにわたり夫婦でいれば感情のもつれや衝突も無いとは申せますまいが、それも含め
て信頼を育んでいくのが夫婦というものなのでは?

「分かってるわよ。
 あの二人はお似合いだわ。」

はい?

「見ていれば分かる。
 わたしの姉さんが見染めた男だもの、ひとかどの神であることも分かるわ。
 どれだけ長い間、姉さんのことを見てきたと思っているのよ?
 だけど − 」

だけど…?

「ケチのつけようが無いから、わたしから姉さんをさらっていく男に反対する理由が無いから、
 余計に腹が立つんじゃないの!」

「でしたら、もうこの際スッパリ思い切られてはいかがですか?
 わたし、侍女として旅をご一緒させていただいて、あらためて思いました。
 一つの魂が分かたれた和魂と荒魂は離れていても断たれるものではないのだと。
 この旅での追体験の数々は、それを確かめるためのものではなかったのですか?」

「…ああっ、もう!わかったわよ!」

(妹君様はすっくと立ちあがったかと思うと、姉君様と牛頭天王様のところへ歩いて行かれます。)

「姉さん、わたしたちそろそろ元の世界へ帰ってもいいと思う。
 …もう、封印を解いても良い頃だと思うし。」

「ぜんちゃん、いいの?」

「よくないわけがないでしょう?
 でも、その前に一度だけ。」

「一度だけ、なに?」

「思い切り喧嘩がしたい。
 妹の最後の我儘だと思って、受けてくれない?
 そして、花婿にも見てもらおうじゃないの。
 龍神の力がどれほどのもので、娶るならどれだけ覚悟してもらわないといけないかを。」

(つづきます。)


272 名前:吸血姫アーチェロ ◆ufrlRV4E 投稿日:2022/08/04(Thu) 16:44
>>258(柚葉さん)(つづきです。)

(いつの間にかこの世界で最初に降り立った、樹々に囲まれた開けた空間に戻っていました。
 ただし、あのときとは打って変わって暴風逆巻き稲光奔る大嵐となっていますが。)

これが…神々の御力。
二柱の龍神様のぶつかり合いはこれほどの猛威を周囲にもたらすのですね。
神使様、わたくしの魔力が作った防護結界はちゃんと効いておりますか?

「はい、お陰様でこうして無事にお二方の戦いを見ていられます。」

以前(>>260)姉君様から
『おそらく、あなたの力を必要とするときがあると思う』
と言われていましたが、もしかするとこのことを予想されていたのでしょうか…?

「そうかも知れませんね。
 我が主が未練を断ち切るには何らかの大きな狂瀾を避けては通れないと見当をつけていらっ
 しゃったのでしょう。」

ところで牛頭天王様はどこに?

「あの暴風雨の中で毅然としてお二人を見守っていらっしゃいます。
 『我妻と義妹となる二人を傍で見守らねばならない』とおっしゃって。」

さすが音に聞こえた剛の方。
そうであればこそ龍神様と添うこともできるのでしょうね…。

(数刻の時が過ぎて台風一過のような周囲の様子に、あらためてお二人のお力を実感いたしま
 した。)

お二人とも地面に仰向けになって体を横たえられ充足した表情をなさっています。

「姉さん、長いこと、ごめん…。」

「ううん、全然。昔の甘えん坊のあなたに抱きつかれているようで悪い気はしなかったわ。
 …わたしからの贈り物、受け取ってくれるわね?」

「うん、もちろんだよ、ありがとう…。」

「主様、姉君様、お二人ともお疲れ様でございました。
 お茶が入りましたのでどうぞ。」

(わたくしも神使様から紅茶をいただき、魔力を使った後の疲れを癒します。
 しばらく皆でほっと息を吐いて過ごしました。)

「では、そろそろ帰りましょうか?
 アーチェロさん、お母君にお声をかけてくださる?」

「はい、承知しました。
 お母様、聞こえていらっしゃいますか?
 戻らせていただきたいので、お願いできますか?」

(分かったわよぉ。
 それじゃあ、モニターに召喚魔法をかけるわねぇ。)

(わたくしたちの体が光に包まれます。)

………。
はあ、戻って来られました。
皆さん、揃っていらっしゃいますか?
姉君様、妹君様、神使様、…あ、あれ、牛頭天王様!?
え、でも、あなた様は絵の中の回想の世界の方では…?

「ああ、誤解されてしまったかな?
 わたしは吸血姫殿の母君に呼ばれてきた、こちらの世界の本物だよ。
 母君のお陰で、ようやく善女龍王殿と和解することができた。」

「わ、わたしはまだ認めたわけじゃないんですからね!
 ちゃんと、姉さんを幸せにしてくれないと承知しないんだから!」

「肝に銘じるよ。」

「ふ、ふんだ、ぜひそう願いたいわね。
 さあ、そろそろ降雨の儀を始めましょう!
 アーチェロさん、お願いね。
 わたしたち龍神の力ではなく、町の住民であるあなたの力で降らせる雨は、人と魔と神との
 絆の証しとなるのだから。」

承知いたしました。
わたくしの全力を以てこの湖を雨水で満たしてご覧に入れましょう。

(わたくしは、天に向けてかざした手より魔の力を放出しそして祈ります。
 どうか、この地が人と神とそしてわたくしたち魔にとって潤いに満ちた場所でありますよう
 に…。)

(やがて静かに雨が降り、湖の青い水面が広がっていきました…。)


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